ゴ

ブータンの男性が着用する民族衣装「ゴ（Gho）」は、隣国チベットの文化的な影響を強く受けた衣服です。その形状は、前で打ち合わせる筒袖の着物のような形をしており、日本の和服に似た印象を与えます。

ゴは袷仕立てで、丈は対丈（ついたけ：着丈が身長と同じ長さ）です。襟はへちま襟と呼ばれる形状をしており、これも和服の襟に似ています。しかし、ゴの大きな特徴は、袵（おくみ：着物の打ち合わせを閉じた時に前身ごろに重なる部分）の幅が、和服の約1.5倍近くあることです。この袵の広さが、ゴ独特のシルエットを生み出しています。

ゴを着用する際には、着物のおはしょりのように、腰の部分で大きくたくし上げ、懐（ふところ）を作ります。たくし上げた部分を、幅5センチメートルほどの帯でしっかりと固定します。一般的には、ゴの裾は膝上丈になるようにたくし上げるのが普通ですが、国王のみは例外で、膝下丈で着用します。

ゴの生地には、紬や木綿などが用いられ、模様は格子模様や縞模様が一般的です。色は、くすんだ赤色、緑色、茶色など、日本の丹前（どてら）を彷彿とさせる落ち着いた色合いが特徴です。ゴの下には、白い綿の長袖シャツ「テュゴ」を着用し、必要に応じて礼装用の肩掛け「カムニ」を羽織ります。

カムニについて

カムニは、幅約90センチメートル、長さ約4.5メートルの布でできた肩掛けです。左肩から右脇にかけて斜めに羽織り、礼装の際に用いられます。カムニの色は、着用する人の身分によって厳格に分けられています。国王は橙黄色、大臣は緋色、局長および県長は臙脂色です。副知事や次長は、赤地の布に白いラインが入ったもの、村長は逆に白地の布に赤いラインが入ったものを着用します。一般庶民は、無地の白いカムニを着用します。このように、カムニの色によって身分が明確に区別されることは、ブータンの社会構造を表す一つの象徴と言えるでしょう。

ゴは、ブータンの男性にとって、日常着であり、また正装としても用いられる重要な衣装です。ブータンでは、民族衣装の着用が法律で義務付けられており、国民は公共の場では常にゴまたは女性用の民族衣装であるキラを着用することが求められています。これは、ブータンが自国の文化と伝統を大切にし、民族衣装を通じて国民の一体感を醸成しようとしている表れと言えるでしょう。

ゴの形状や着方、カムニの色など、様々な側面からブータンの文化や社会を理解することができます。ブータンを訪れる機会があれば、ぜひゴを着用している人々に注目し、その文化的な背景を感じてみてください。

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