丹前

丹前（たんぜん）

丹前とは、厚く綿を入れた防寒用の日本式の上着を指します。一般的には「どてら」という名でも知られており、長着の一種として分類されます。

歴史

丹前の発祥は、江戸時代初期に旗本に仕える使用人、特に「旗本奴」と呼ばれる者たちの間で流行したのが始まりとされています。彼らが着始めたものが、次第に一般の人々にも広まっていきました。

特徴

丹前の特徴は、綿がたっぷり入った広袖の長着であることです。生地には、派手な縞柄が用いられることが多く、この縞柄は特に「丹前縞」と呼ばれています。また、中綿が入っていない厚手のウール生地で作られた丹前も存在します。

類似の衣服として綿入れ袢纏がありますが、これは羽織のような形状で腰までの長さの上着です。ただし、地域によっては、この綿入れ袢纏を丹前、あるいはどてらと呼ぶ場合もあります。また、日本の東北地方や北海道地方では、寝具の一種である掻巻を丹前と呼ぶことがあります。

丹前の原型

丹前の原型は、吉原の遊女であった勝山の衣装にあるという説があります。勝山は、元は江戸神田にあった「丹前風呂」という風呂屋の湯女でした。この風呂屋は、堀丹後守（堀直寄）の下屋敷の前に位置していたため、その名で呼ばれていました。勝山にあやかって、丹前風呂の湯女たちは勝山に似た衣装を身につけており、そこに通っていた旗本奴たちが、その衣装に似たものを着て風流を競ったことが、丹前という衣服の名称の由来になったと言われています。

旗本奴や、のちに侠客などが、派手な縞柄の丹前に広幅の丹前帯をだらしなく締めて着流すスタイルが流行しました。歌舞伎役者の多門庄左衛門は、侠客の役を演じる際、当時流行していた丹前姿で六方を踏んで花道を悠然と出入りし、絶大な人気を博しました。この「丹前六方」にあやかり、丹前を着流して街を闊歩する者が後を絶たず、彼ら自身も「丹前」と呼ばれるようになったという逸話も残っています。

関連項目

掻巻（かいまき）：寝具の一種。
袢纏（はんてん）：防寒用の上着。
* ドテラマン：主人公が「ハイパードテラ」を着用してスーパーヒーローに変身するアニメ作品。

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