この胸いっぱいの愛を

映画『この胸いっぱいの愛を』の概要

『この胸いっぱいの愛を』は、2005年に公開された日本の映画で、原作は梶尾真治の短編「鈴谷樹里の軌跡」です。監督を務めたのは塩田明彦で、彼は2003年の映画『黄泉がえり』でも知られています。この作品は、原作の短編に他のキャラクターや設定を加え、大幅にリメイクされたものです。また、原作者によるノヴェライズ版も発表され、映画ファンに新たな視点を提供しています。

キャッチフレーズにある「思いが叶った瞬間（とき）、さよならが待っている」という言葉は、物語の核心を突くもので、主人公が直面する運命や葛藤の象徴です。

あらすじ

物語の主人公、鈴谷比呂志は30歳の百貨店勤務の男性です。彼は出張を機に幼少期を過ごした福岡県北九州市の門司を訪れます。そこで彼は、20年前の自分に遭遇するという驚愕の体験をします。かつての自分の姿を見て、比呂志はかつての痛ましい過去を思い出し、特に自分の不始末で起こした火事の記憶に苛まれます。

比呂志は、再び社会に戻る前に過去を正すチャンスが与えられたと感じ、幼い頃に自分が過ごした旅館に駆け込みます。そこで彼は自らの手で火を消し止め、火事を防ぎます。この経験を通じて、彼はその旅館での住み込み勤務を開始し、幼少期の自分との新しい生活が始まります。

その中で比呂志は、彼の初恋の相手である青木和美と再会します。和美は音楽大学を卒業し、バイオリニストを夢見ている明るい女性で、昔の友達であり、彼女の存在は比呂志にとって特別な意味を持つものでした。しかし、比呂志の記憶では、彼女は難病を抱え、最終的には命を落としてしまう運命にありました。今、比呂志はもう一度彼女を救う機会を得るのか、彼の心に大きな葛藤が生まれます。

異なる結末

映画と原作では結末が大きく異なり、視聴者に印象的な体験を与えています。ヒロの人生を変える「人生改造十ヶ条」の10個目の解釈により、原作版ではハッピーエンドを迎えますが、映画版では全く異なる解釈がされ、しっとりと重苦しい結末へと至ります。この違いが、観客に残る後味として作用し、映画に対する考察を促します。

キャストとスタッフ

主要キャストには、鈴谷比呂志役を伊藤英明、青木和美役をミムラ、そして布川輝良役を勝地涼が演じています。そのほか、多彩なキャストが物語を彩ります。スタッフ陣は、映画を成功に導くために精力的に取り組み、監督の塩田明彦を筆頭に多くの才能が結集しました。

また、映画の主題歌「Sweet Mom」は柴咲コウが担当し、ストーリーに深みを与えています。さらに、原作のノヴェライズや漫画化も行われ、映画と同じ時期に公開される形で様々なメディア展開がなされました。これにより、作品のテーマやキャラクターの魅力が広く共有され、多くのファンに愛される作品となりました。

『この胸いっぱいの愛を』は、過去と未来、愛と別れが交錯する運命を描いた感動的なストーリーとして、観る者に強いメッセージを投げかける映画です。

もう一度検索