こんな私じゃなかったに (映画)

こんな私じゃなかったに (1952) - 川島雄三監督作品

『こんな私じゃなかったに』は、1952年に公開された川島雄三監督による日本のコメディドラマ映画です。原作は『週刊平凡』に連載された北條誠の作品。戦後の社会を背景に、一人の女性の生き方と、彼女を取り巻く人々の人間関係を軽快なタッチで描いています。

あらすじ

物語の舞台は、自由大学の理学部応用化学教室。才媛として知られる女学生、村田千秋は、姉の昌子に学費を負担してもらっています。昌子はかつて芸者として働いており、現在は踊りの師匠として生計を立てています。また、昌子は出征後消息不明となった夫との間に生まれた息子、貢一を田舎に預け、生活費を送金していました。

千秋は、姉の苦労を思い、姉の昔の友人であるお龍の紹介で、夜に芸者のアルバイトを始めることを決意します。持ち前の美貌と学力、そして姉譲りの踊りの才能を発揮し、千秋はたちまち人気芸者となります。

しかし、千秋が芸者として働いているという噂は大学にも広まります。千秋に思いを寄せる天文学教室の学生、山下欽一は、そのことを知り心を痛めます。そんな中、千秋は酔った勢いで、客の矢島武に結婚を迫られます。矢島の人柄に惹かれたからでした。

やがて、千秋の芸者アルバイトの噂は姉の昌子の耳にも入ります。心配した昌子は、山下と相談し、矢島と対面することに。そこで、矢島の正体が、昌子の元夫である横山武であることが判明します。千秋は、矢島が姉を苦労させている張本人だと知り憤慨しますが、実は矢島自身も、昌子が身を引いた理由を知らなかったのです。それは、矢島の家族が勝手に仕組んだことでした。

10年ぶりに父親が帰ってきたことを喜ぶ息子の貢一。貢一を中心とした昌子、矢島の家族3人の姿に、千秋は感動します。その後、大学の七夕祭で、千秋は山下と仲良く望遠鏡を覗き込むのでした。

作品の魅力

『こんな私じゃなかったに』は、戦後の日本社会における女性の自立や家族のあり方をテーマにしながらも、全体的には明るく軽快なコメディとして描かれています。ヒロインの千秋が、学費のために芸者として働くという設定は、当時の社会状況を反映しており、観客に共感と感動を与えます。また、姉の昌子とその元夫との再会というドラマチックな展開は、物語に深みを与えています。

川島雄三監督の演出は、テンポが良く、ユーモアに溢れています。また、当時の人気スターである宮城千賀子、水原真知子、山村聰などの演技も見どころです。

主題歌である神楽坂はん子が歌う「こんな私じゃなかったに」も、映画の雰囲気を盛り上げています。

キャスト

村田昌子：宮城千賀子
村田千秋：水原真知子
矢島武（横山武）：山村聰
山下欽一：川喜多雄二
神楽坂はん子：本人（特別出演）

スタッフ

監督：川島雄三
原作：北條誠
脚本：川島雄三、池田忠雄、柳沢類寿、野村芳太郎
* 音楽：木下忠司

まとめ

『こんな私じゃなかったに』は、戦後の日本映画史において、コメディドラマの傑作として高く評価されています。笑いと涙、そして感動が詰まった本作は、時代を超えて多くの人々に愛され続けています。

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