さいはて慕情

さいはて慕情

「さいはて慕情」（さいはてぼじょう）は、日本の歌手、渚ゆう子が1971年3月にシングルとして発表した楽曲です。

制作背景

渚ゆう子は、東芝音楽工業（現在のEMIミュージック・ジャパン）のディレクター草野浩二氏のもと、ザ・ベンチャーズを起用したシングル「京都の恋」、「京都慕情」を連続して大ヒットさせていました。これらの成功を受け、次なるフォローアップ作品の制作が進められることになります。この新曲の作曲家として、前作で楽曲提供を行ったベンチャーズに代わり、新たに筒美京平氏が起用されました。作詞は前作から引き続き、林春生氏が担当しています。制作チームは、これまでのベンチャーズサウンドを継承しつつも、新たな音楽性を追求しました。

楽曲の特徴

筒美京平氏の手によって生み出された「さいはて慕情」は、ザ・ベンチャーズの楽曲で特徴的だったエレキギターのサウンドを前面に出すことを控えめにし、代わりにシャッフルビートを用いたミディアムテンポの楽曲として完成しました。これにより、渚ゆう子の歌声がより際立ち、情感豊かな雰囲気が醸し出されています。

この楽曲の特に印象的な要素として、曲の最後に流れる蒸気機関車の汽笛と走行音があります。これは、レコーディング・エンジニアの行方洋一氏が、楽曲の世界観を表現するために実際に北海道に赴き、現地で録音した実音だと言われています。この効果音が、歌詞に込められた情景や感情をより深くリスナーに伝えています。

商業的成功と評価

1971年3月に発売された本作は、前作のヒットを引き継ぐ形で商業的な成功を収めました。オリコンシングルチャートでは最高位6位を記録し、広くリスナーに受け入れられるヒットとなりました。

その年の音楽シーンにおいても高く評価され、第13回日本レコード大賞において歌唱賞を受賞するなど、数々の音楽賞に輝いています。これにより、「さいはて慕情」は渚ゆう子の代表曲の一つとしての地位を確立しました。

収録曲

シングルには以下の2曲が収録されています。いずれも作詞は林春生、作曲・編曲は筒美京平によるものです。

1. さいはて慕情
2. しのび雨

収録アルバム

「さいはて慕情」は、渚ゆう子の複数のアルバムに収録されています。代表的なものとしては以下のようなアルバムが挙げられます。

『さいはて慕情』（同名アルバム）
『ゴールデン・ディスク』
『渚ゆう子 オン・ステージ』
『渚ゆう子 リサイタル』
『ナイト・クラブの渚ゆう子』
『GOLDEN☆BEST 渚ゆう子』
その他多数

カバー

この楽曲は、発表された1971年を中心に、他の歌手によってもカバーされています。主な例は以下の通りです。

朝丘雪路（1971年）
アルバム『雨がやんだら／ある愛の詩 雪路ビッグ・ヒットを唄う Vol.2』、『GOLDEN☆BEST 朝丘雪路 筒美京平を歌う』に収録。
小柳ルミ子（1971年）
アルバム『私の十二曲〜日本抒情歌集』に収録。
北原ミレイ（1971年）
アルバム『ざんげの値打ちもない』に収録。

「さいはて慕情」は、筒美京平氏の新たな才能が開花した一曲であり、渚ゆう子の歌唱力と相まって、日本の歌謡曲史に残る名曲として今なお多くの人々に記憶されています。

関連項目

1971年の音楽

もう一度検索