さくら (たばこ)

さくら（SAKURA）とは

「さくら（SAKURA）」は、日本の主要なたばこ製造販売会社である日本たばこ産業株式会社（JT）が、過去に市場に供給していた紙巻きたばこの銘柄の一つです。その名前の響きからも分かる通り、日本的な要素や感性を意識して開発された製品でした。

旧「さくら」の販売

この「さくら」銘柄が初めて世に出たのは、2005年2月1日です。この時期、JTは複数の新製品やリニューアル品を同時に市場に投入しており、「さくら」も「マイルドセブン・スーパーライト・エコスタイル」や「セブンスター・レボ・ライト・メンソール ボックス」といった他の銘柄群と共に発売されました。

最初に登場した旧バージョンの「さくら」は、全国での販売ではなく、販売地域が限られていました。具体的には、日本の南九州に位置する鹿児島県と宮崎県のみでの展開でした。

この旧「さくら」の開発には、当時のJT社長であった本田勝彦氏が関わったとされています。経営トップが製品開発に直接関わることは、その銘柄に対する期待の高さを示唆しているとも考えられます。

しかし、この旧「さくら」の市場での寿命は比較的短く、発売からおよそ1年を経た2006年1月には、その販売が終了となりました。

D-spec版「さくら」への移行と終売

旧バージョンの販売終了から約9ヶ月後の2006年10月2日、JTは「さくら」の名前を冠した新たな製品を市場に投入します。この日も、JTが複数の銘柄を地域限定で発売を開始した日であり、そのラインナップの一つとして「D-spec版さくら」が登場しました。

D-spec版として生まれ変わった「さくら」は、販売地域が変更され、今度は神奈川県のみでの地域限定販売となりました。

新しい「さくら」の開発におけるコンセプトは、果物のチェリーからインスピレーションを得つつ、日本ならではの情緒や洗練された感覚を取り入れた本格的なシガレットを目指すというものでした。和のテイストとフルーティーな要素の融合が意図されていたようです。

D-spec版は、旧製品からの改良が施されています。具体的には、タール値が以前よりも低く設定され、さらにJT独自の低臭気化技術である「D-spec」が導入されました。これにより、喫煙時に発生する煙のにおいを低減し、喫煙者だけでなく周囲への配慮も強化されるなど、現代の嗜好や喫煙環境に合わせた仕様へと進化しました。その一方で、製品の顔とも言えるパッケージデザインや、「さくら」という銘柄の根幹を成すイメージは、旧バージョンから基本的に引き継がれています。

しかし、このD-spec版「さくら」も恒久的な製品とはなりませんでした。登場から約4年後の2011年1月をもって、その販売が終了しました。これをもって、「さくら」という名称の紙巻きたばこは、日本の市場から姿を消すこととなりました。

「櫻」名称の歴史的な参照

現在のJTが手掛けた「さくら」銘柄と直接的な継続性はないものの、「さくら」という名称が持つ日本的な響きに関連する歴史として、過去の事例が言及されることがあります。

第二次世界大戦中、当時流通していたたばこ銘柄の一つに「チェリー」がありました。この銘柄の英語名が戦時下の情勢において「敵性語」と見なされたため、漢字表記の「櫻」へと一時的に名称が変更されて販売されていた時期があります。

しかし、この「櫻」銘柄も戦況の悪化に伴う物資不足の影響を受け、1944年には生産が停止され、廃止されました。この出来事は、元祖「チェリー」銘柄の歴史的な終焉として記憶されています。現代の「さくら」銘柄とは直接的なルーツを共有するわけではありませんが、たばこの名称と時代の背景との関わりを示す興味深いう事例として、時折引き合いに出されることがあります。

「さくら（SAKURA）」は、短い販売期間ながらも、特定の地域に限定して展開されるという特徴や、D-spec技術の導入による製品改良を経て存在した、JTのたばこの歴史における一ページを飾る銘柄です。

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