さくら丸 (帝国海事協会)

さくら丸の歴史と運命

さくら丸（さくらまる）は、日露戦争時に帝国海事協会が建造した貨客船です。通常時は商船として運航され、戦時中は仮装巡洋艦として活躍することを目的とした義勇艦に位置づけられていました。この船は「櫻丸」とも表記されることがあります。

建造の経緯

日露戦争の勃発に伴い、帝国海事協会は国のために義勇艦を製造するための資金を募りました。この呼びかけは多くの人々から支持され、結果として「さくら丸」と「うめが香丸」の2隻が建造されることが決定されました。

さくら丸は、1906年5月12日に発注され、その後同年7月9日に起工が祝われました。そして、1908年6月6日に進水し、10月9日に竣工を迎えました。造船は三菱造船所で行われ、船番は194でした。

初期の運航

1908年11月17日、さくら丸は神戸沖で行われた観艦式に参列し、晴れやかなデビューを果たしました。しかし、1909年2月3日から大阪商船に貸与され、神戸・基隆線で商業運航を開始するも、その運航は苦難の連続でした。船体の動揺が激しく、宮原式ボイラーから発生する黒煙も問題視され、乗客からの評価は芳しくありませんでした。そのため、わずか2年で運航が終了することとなりました。

その後の運命

1911年、さくら丸は鉄道院に貸与され、関釜航路に就航することになりましたが、この運航がどれほど成功したかは不明です。1917年に大洋汽船に売却された後の1918年には、横浜船渠で貨物船に改装され「五洋丸」という新しい名前が付けられました。この際、機関も三連成レシプロ機関2基に交換されました。

1921年に靭商船に所有権が移り、1927年3月には多聞汽船の「第十八多聞丸」と接触事故を起こす事件が発生しました。

結局、1931年にさくら丸は大きな海難事故に遭い、沈没してしまいました。このような運命を辿ったさくら丸は、義勇訪問を果たした歴史を持ちつつも、商業船としては評価されず、その後建造された「さかき丸」は使用者のニーズに基づいて設計されたとされています。

評価と影響

さくら丸やうめが香丸は、商船としての評価があまり得られなかったことがその後の艦船建造に影響を与えました。特にさかき丸の設計は、過去の失敗を踏まえて、利用者の声を反映する形で行われることになりました。このように、さくら丸の歴史は、単なる一隻の船以上の意味を持ち、海事史における重要な教訓を残したと言えるでしょう。

このように、さくら丸の物語は、その運航の短さにもかかわらず、日本の海事の歴史において注目すべき存在となっています。

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