さくら型哨戒艦

さくら型哨戒艦

さくら型哨戒艦は、海上自衛隊が新たに導入を計画している艦艇で、主に広域監視任務に特化しています。この艦はジャパン マリンユナイテッドが主契約者となり、三菱重工業がその下請けを担当します。令和5年（2023年）度の予算から建造が開始され、1隻あたりの建造費用は約90億円とされています。

背景と使命

日本周辺海域の安全を守るためには、常時監視が不可欠です。航空自衛隊が陸上での警戒を担当している一方、海上自衛隊は洋上の警戒監視を行います。しかし、従来の艦艇や哨戒機では十分なカバーが難しく、特に中国やロシアの軍艦の活動が活発化する中、警戒体制を強化する必要がありました。そうしたニーズに応えるために、さくら型哨戒艦の整備が決定されました。

設計と機能

初期には約1,000トンの排水量が予定されていましたが、監視任務の重要性から基準排水量が1,900トンに増加しました。この艦はヘリコプター甲板を前提にした設計がされており、海上保安庁の巡視船に似た形状も持つものの、特に監視機能に着目した造りとなっています。

ステルス性も考慮されていますが、もがみ型護衛艦ほどの高いレベルではありません。艦は鋭いナックルを持ち、艦首にはブルワークが設けられ、艦橋は一体構造として大きな面積を占めるようなデザインです。また、海上作戦において低速での安定した運航を重視しており、減揺水槽も装備されています。支援用のバウスラスターを設けることで、タグボートなしでも港への出入りが可能です。

さらに、日本の少子化と高齢化社会に対応するため、省人化も重視されています。自動での離着岸ができる「自動離着桟機能」や、遠隔で火災消化が行える「統合監視制御装置」が導入され、乗員数を削減しつつ運用効率の向上が図られます。航行方式もCODLAD方式を採用しており、25ノット（約46km/h）の最大速力を持っています。

武装と装備

さくら型哨戒艦は警戒監視に特化しているため、武装は最小限に留められています。艦首には30mm口径の機関砲が1門搭載され、必要に応じてコンテナ型の対艦ミサイル発射装置も装備可能です。電子機器は航海用レーダーや電子光学センサーなどを備えていますが、情報収集用の装備は装備されない見込みです。

艦尾には多目的甲板があり、ヘリコプターの運用も可能です。また「多目的格納庫」やクレーンも設けられ、無人潜水機や水上艇などの使用が考慮されています。2025年にはV-BATという無人航空機の運用が予定されており、さらなる多機能性が期待されています。

同型艦と展望

さくら型哨戒艦は、今後12隻の整備が計画されており、令和5年度予算で4隻が新たに建造されることが決まっています。これに対し、令和9年度までに10隻が導入される予定です。艦の名称は鳥や木、草に由来する名前が採用されることになり、2隻1編成の部隊が地方隊に配備される計画です。また、2024年5月の指令改正により、この哨戒艦には「OPV」という記号が付与されることが決まりました。

さくら型哨戒艦の導入は、海上自衛隊の機能向上につながることが期待されており、今後の運用が注目されています。

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