さざなみ町

さざなみ町

さざなみ町（さざなみちょう）は、2005年（平成17年）4月1日に長崎県北松浦郡の佐々町と小佐々町が合併することで発足する予定だった町の名称です。しかし、新町名を巡る混乱から合併協議は決裂し、幻の町名となりました。

合併までの経緯

佐々町と小佐々町は、長崎県の北西部、北松浦半島の南西部に位置しています。両町はかつて炭鉱で栄えましたが、エネルギー革命により閉山。過疎化が進む中、佐々町は佐世保市のベッドタウンとして、小佐々町は漁業や観光業を中心に発展を目指しました。

両町は1889年（明治22年）にそれぞれ佐々村、小佐々村として発足し、その後町制を施行しました。平成の大合併の動きの中で、両町は合併協議を開始。2002年（平成14年）には法定合併協議会を設置し、新町名を公募しました。

公募の結果、最終候補として「大佐々町」「さざ町」「さざなみ町」「西端町」「清峰町」の5つが選ばれました。最多応募の「佐々町」が外れたのは、読み間違いの可能性や、小佐々町が編入合併と見られることを懸念したためです。2004年（平成16年）9月の協議会で、委員の投票により「さざなみ町」が新町名に決定しました。

「さざなみ町」の選定理由

「さざなみ町」の選定理由は以下の通りです。

さざなみは、細やかに立つ波を意味し、佐々川の波紋や海の波を表す、穏やかなイメージがある。
両町を一艘の舟に例え、波に乗って発展していくイメージがある。
静かな入り江に寄せる波のイメージで、やさしい響きがある。
両町に共通する「さざ」にちなむ。

しかし、この決定に対し、佐々町では「佐々町」を支持する署名運動が起こり、町民の意見が二分しました。

合併協議の決裂

佐々町は民意の調整に難航し、小佐々町からの合併協定調印要請に応えることができませんでした。小佐々町は佐々町の対応に不信感を抱き、合併協議の再開を拒否。2005年（平成17年）1月、小佐々町議会は佐々町との合併協議会を廃止する案を可決し、佐々町もこれに続きました。これにより、2005年3月31日をもって合併協議会は解散し、さざなみ町の誕生は幻となりました。

その後の両町

合併協議決裂後、小佐々町は佐世保市との合併協議を開始。2006年（平成18年）3月31日に佐世保市に編入され、自治体として消滅しました。

一方、佐々町では合併協議の混乱の責任を取り、町長が辞職、町議会が解散するという事態に陥りました。その後、他の自治体からの合併の申し入れを拒否し、佐世保市との合併協議も住民投票で否決。単独町制を維持することになりました。

佐々町はその後、佐世保市を中心とする連携中枢都市圏に加入し、広域連携による地域活性化に取り組んでいます。

「佐々」の地名の由来

両町に共通する地名「佐々」は、鎌倉時代の文書に「佐々浦」として見え、松浦党の一族に佐々氏や小佐々氏の名が見られます。地名の由来には諸説あり、砂地が広がっていた様子、佐々川や佐々浦の水面や地形の様子、あるいはササが繁茂していた様子を表すとする説が有力ですが、いずれも根拠を示す文献は確認されていません。

まとめ

さざなみ町は、新町名を巡る混乱によって誕生が叶わなかった幻の町です。合併は実現しませんでしたが、その過程で明らかになった地域の課題や、それぞれの町の歴史は、今もなお地域の未来を考える上で重要な教訓となっています。

もう一度検索