佐々川

佐々川：九十九島を分かつ流れ

佐々川（さざがわ）は、長崎県北部の北松浦半島南西部を西へと流れ、九十九島を二分する佐々浦に注ぐ二級河川です。流域は佐世保市と北松浦郡佐々町にまたがり、支流の福井川の一部は佐世保市江迎町にも属しています。かつては長崎県内で最も長い河川でしたが、諫早湾干拓事業の影響で現在は2番目となっています。

地理

佐々川は、断層に沿って緩やかな弧を描きながら流れ、多くの支流が合流します。流域は「佐々谷」とも呼ばれ、北松浦半島中央部の国見山の西麓を水源としています。

源流部は険しい谷ですが、すぐに世知原地区の盆地に入り、茶畑や水田の間を西へ流れます。南谷川、竜ノ氏川、上野原川、北川内川などの支流が合流し、長崎県道54号線が並走します。

中流の吉井地区では、右岸から福井川が合流し、その後、南西へと流れを変えて佐々町に入ります。右岸は丘陵地が広がりますが、左岸は比較的平坦で、住宅地や田畑が多く見られます。

下流には小規模な沖積平野が広がり、右岸は佐世保市小佐々・浅子地区、左岸は佐々町および佐世保市相浦地域となります。河口に架かる見返橋の下流で、左岸から木場川が合流します。

河口は幅約300mの湾状になっており、「佐々浦」と呼ばれます。この佐々浦を境に、九十九島は南九十九島と北九十九島に分けられます。

自然

甌穴（ポットホール）

中流の佐世保市吉井町には、甌穴が多く見られます。

河川争奪

支流である福井川は、佐世保市吉井町直谷と江迎町田ノ元の境で、ほぼ直角に曲がり、佐々川に合流します。また、この地点のすぐ西を流れる江迎川も同様に直角に曲がっています。

この地形は河川争奪によって形成されたものです。かつて福井川は江迎川の本流でしたが、断層活動により田ノ元より下流が上昇しました。その後、佐々川の侵食によって分水界が破られ、福井川は佐々川に合流するようになりました。

生物

佐々川流域は、昭和40年代まで北松炭田の炭鉱が多数操業していました。当時は石炭を洗うために川が黒く濁り、「ぜんざい川」と呼ばれていました。

しかし、炭鉱閉山後は水質も回復し、早春のシロウオ漁や夏のアユ釣りは地域の風物詩となっています。また、佐々浦の干潟では、潮干狩りや様々な漁が行われ、カブトガニが発見されることもあります。

産業

流域では、茶畑や水田が広がっています。下流地域では、江戸時代に平戸藩主の命によって新田開発が行われました。また、江戸中期から昭和中期にかけては、流域の北松炭田で石炭採掘が行われていました。

河口の佐々浦には、昭和初期まで渡し場があり、左岸の佐々港は石炭の積み出し港としても利用されました。現在は、漁船の船溜まりや、九州電力相浦火力発電所などの工業用地として利用されています。

参考文献

長崎県土木部河川課『ながさきの水辺』
角川日本地名大辞典編纂委員会編『角川日本地名大辞典 42 長崎県』1987年

関連項目

* 日本の川一覧

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