さぶ (雑誌)

ゲイ雑誌『さぶ』：日本のゲイ文化史における足跡

1974年11月から2002年2月まで、サン出版から発行されていたゲイ雑誌『さぶ』。本誌は、日本のゲイ文化史において重要な位置を占める一方、独特の存在感を放っていました。SMを主とした過激な内容と、強烈な個性を持つ表紙絵で知られ、日本のゲイ像の形成に影響を与えたと同時に、一般社会への認知度を高める役割も担いました。

創刊から休刊まで：ハードコア路線と時代の変化

『アブハンター』の増刊号として誕生した『さぶ』。創刊編集長は櫻木徹郎氏でした。当初は隔月発行でしたが、すぐに月刊化され、300号以上に及ぶ長期連載を続けました。キャッチコピーは「男と男の抒情誌」でしたが、その内容は『薔薇族』とは対照的に、漢・野郎・SM・硬派といったハードコア路線を展開。この路線は、当時における「男性同性愛者」のイメージを形成する上で大きな役割を果たしたと言われています。

表紙絵は、初期は三島剛氏、その後は木村べん氏が担当。三島剛氏は雑誌名の由来にも関わっています。誌面には、イラスト、グラビア、文通欄、小説、読者投稿など多様なコンテンツが掲載され、読者を引きつけました。巻頭には三島剛氏のイラスト、中面や巻末には林月光氏のカラー絵巻『月光・天狗劇場』が掲載されるなど、独特の芸術性も持ち合わせていました。

しかし、1990年代後半になると、『G-men』や『Badi』といった新興ゲイ雑誌の台頭により、発行部数が減少。2002年2月号をもって休刊という決断を下しました。

社会への影響：メディアへの露出とイメージ形成

『さぶ』は、その過激な内容と語呂の良さから、メディアにもたびたび登場しました。特に、フジテレビ系の『タモリのボキャブラ天国』では、投稿ネタの題材として取り上げられ、ゲイ以外の層にも知名度を広めました。

徳弘正也氏の漫画『新ジャングルの王者ターちゃん』では、主人公が「さぶミッション」と発言するシーンがあり、この雑誌がどれだけ広く知られていたかを示しています。また、TBSラジオの『岸谷五朗の東京RADIO CLUB』内番組では、「新宿のさぶ」というゲイキャラクターが登場するなど、メディアミックスを通して存在感を示しました。

興味深いエピソードとして、技術評論社のパソコン雑誌『The BASIC』が、略称の「ざべ」を『ざべ』に変更したところ、誤って『さぶ』と間違われ、書店のアダルト本コーナーに陳列されたという逸話があります。これは、当時における『さぶ』の認知度の高さを示す出来事と言えるでしょう。

『さぶ』が生み出したもの：文化と社会への影響

『さぶ』は、単なるゲイ雑誌という枠を超え、日本のゲイ文化に大きな影響を与えました。「男性同性愛者＝角刈りに褌、色黒でがっちり、マッチョ」というイメージの形成に貢献した一方、その過激な表現は、一部に批判的な意見も生み出しました。しかし、その存在は、日本のゲイ文化史において無視できない重要な要素であり、時代を反映する鏡として、これからも研究対象として語られるべきでしょう。

関連人物

犬飼隷二氏など、多くのアーティストやクリエイターが『さぶ』に関わっていました。彼らの作品は、雑誌の内容と同様に、時代を反映した表現で、今後の研究においても重要な資料となるでしょう。

まとめ

『さぶ』は、その過激な内容とメディア露出を通じて、日本のゲイ文化に多大な影響を与えました。休刊から年月が経った現在も、その存在感は色褪せることなく、日本のゲイカルチャー史において重要な位置を占め続けています。その功罪を含め、今後の研究を通してより深く理解していく必要があるでしょう。

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