さらに演歌を見つめて

さらに演歌を見つめて

「さらに演歌を見つめて」（さらにえんかをみつめて）は、日本の演歌界を代表する歌手、春日八郎が1976年（昭和51年）に発表したオリジナルアルバムです。「春日八郎オリジナル」というサブタイトルが付与されており、彼の音楽性と創作意欲が詰まった作品として位置づけられます。

このアルバムの最大の特徴は、収録された全12曲それぞれに「〇歌」という形で明確なテーマが設定されている点にあります。人生の様々な局面や感情を、「演歌」「怨歌」「園歌」「婉歌」「艶歌」「炎歌」「縁歌」「厭歌」「遠歌」「宴歌」「煙歌」「援歌」といった多様な切り口で表現しようとする、実験的かつ意欲的なコンセプトアルバムと言えるでしょう。これらのテーマは、演歌というジャンルが包含しうる情感や情景の幅広さを示唆しています。

作詞は全曲を横井弘が担当し、この独特なコンセプトに基づいた歌詞世界を構築しています。作曲・編曲は、三木たかし、桜田誠一、高田弘、小杉仁三、竹村次郎といった、当時の日本の歌謡界を支えた錚々たる顔ぶれが手掛けており、各楽曲にそれぞれの音楽性が反映されています。

収録曲の構成は以下の通りです。

第1面
人生浪花節（演歌）
作曲・編曲：三木たかし
「演歌」をテーマに、人生の哀歓や力強さを浪花節のリズムに乗せて歌い上げる。
爪のあと（怨歌）
作曲・編曲：三木たかし
「怨歌」をテーマに、過去の傷や未練、恨みといった感情を深く表現する楽曲。
花の同期生（園歌）
作曲：桜田誠一／編曲：高田弘
「園歌」というテーマが具体的に何を指すかは多様に解釈可能ですが、同期の仲間や集まり、あるいは学び舎といった「園」に関連する絆や思い出を描いていると想像されます。
古都（婉歌）
作曲：桜田誠一／編曲：高田弘
「婉歌」は「しとやかな歌」「つややかな歌」といった意味合いを持ち、古都を舞台にした繊細で優美な情景や感情を歌い上げる。
浮草情話（艶歌）
作曲：三木たかし／編曲：小杉仁三
「艶歌」は色恋や情念をテーマとし、浮草のような定めない境遇の中で芽生える恋愛模様をしっとりと歌う。
燃えろ夕陽（炎歌）
作曲：桜田誠一／編曲：高田弘
「炎歌」は情熱や激しさ、燃え上がる感情を表現するテーマであり、沈む夕陽に自らの情熱を重ね合わせるような力強い楽曲。

第2面
倖せごっこ（縁歌）
作曲：桜田誠一／編曲：竹村次郎
「縁歌」は、人と人との巡り合わせや繋がり、あるいは儚い縁（えにし）をテーマにした楽曲。
恋なんてきらいさ（厭歌）
作曲・編曲：三木たかし
「厭歌」は、恋のもたらす苦しみや煩わしさを嫌厭する心情を率直に歌う。
故郷ってなんだろう（遠歌）
作曲：桜田誠一／編曲：竹村次郎
「遠歌」は、遠く離れた故郷への思いや、故郷とは何かを問いかけるテーマを扱った楽曲。
占い小唄（宴歌）
作曲：三木たかし／編曲：小杉仁三
「宴歌」は、宴の席や賑やかな集まりに関連するテーマを持ち、軽快なリズムで占いの結果に一喜一憂する様子を描く小唄。
淋しくないかい（煙歌）
作曲：桜田誠一／編曲：高田弘
「煙歌」は、タバコの煙に愁いを託したり、煙のように儚い関係や感情を表現するテーマと思われる。
男の道（援歌）
作曲：三木たかし／編曲：小杉仁三
「援歌」は、困難に立ち向かう男の生き様や、誰かを応援する・支えるといったテーマを扱った、力強い楽曲。

このように、「さらに演歌を見つめて」は、単なる楽曲集としてではなく、演歌という表現形式を様々な角度から探求し、その可能性を提示しようとしたコンセプト色の強いアルバムです。春日八郎の歌唱力と、横井弘の独創的な作詞、そして多彩な作曲・編曲陣の力が融合することで、演歌ファンのみならず、日本の歌謡史においても注目すべき作品となっています。各テーマ「〇歌」による世界観が創り出されています。

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