さんふらわあ (初代)

さんふらわあ：日本のフェリー史に輝く一隻

1972年2月1日、川崎重工業神戸工場で建造された『さんふらわあ』は、日本高速フェリーによって名古屋 - 高知 - 鹿児島航路に就航しました。当時、日本には大型豪華客船が少なかったため、1000人以上の旅客と多数の車両を搭載できる『さんふらわあ』は、その豪華な設備と高い航海速力から、瞬く間に人気を博しました。

その基本設計は、営業定員1000人、乗用車200台、10tトラック約80台または8tトラック100台を積載可能で、航海速力は24ノット以上という、当時としては画期的なものでした。船内には、これまでの日本のフェリーにはなかった本格的な客室設備が備えられており、まさに豪華船の代名詞とも言える存在でした。

しかし、1976年のオイルショックによる経営不振の影響を受け、『さんふらわあ』は運航を停止せざるを得なくなります。その後、商船三井グループの計画変更に伴い、同型船『さんふらわあ2』とともに大洋フェリーに売却されました。

大洋フェリーでは、大阪 - 苅田航路に就航。船尾にセンターランプウェイを追加、ファンネル前部にはディスコスペースを設置するなど、外観や設備の大幅な改装が行われました。船体には、大洋フェリーの特徴的なデザインである「流れ星」や太陽マークが蛍光カラーで描かれ、ドーム部の塗装も変更されました。1979年には、さらに旅客設備のグレードアップ改装を実施。夜の航海を意識した星をテーマにした客室や、屋内化されたプールなどが設けられ、総トン数は12,130トンに増加しました。

1984年には、関西汽船と等価交換の形で、同社に所属することになります。その後、来島どっくを経て、関西汽船は大阪 - 神戸 - 別府航路に『さんふらわあ』を就航させました。

関西汽船での活躍は長く、1998年に『さんふらわあ あいぼり』就航により引退するまで、その豪華な設備と快適な船旅を提供し続けました。初代『さんふらわあ』5隻の中では、最も長く日本国内で運航された船として、その歴史に名を刻みました。

引退後は、2000年に韓国へ、2005年には北朝鮮へと売却されましたが、その後どうなったのかはわかっていません。

2020年、『さんふらわあ』は、クルーズ客船並みの設備を持つフェリーの先駆けとして、日本船舶海洋工学会の「ふね遺産」に認定されました。その功績は、現代のフェリーにも大きな影響を与え続けています。

設計と船内設備

『さんふらわあ』は6層構造（A～Fデッキ）で、Aデッキは操舵室、乗組員区画、旅客区画、Bデッキは遊歩甲板、Cデッキは旅客区画、DデッキとEデッキは車両搭載区画、Fデッキは機関室と乗組員区画でした。ランプウェイは船首両舷と船尾両舷の4箇所に設置されていました。

船体の設計においては、オーストラリア・ナショナル・ラインの貨物船「オーストラリアン・エンタープライズ」がモデルとされ、全長は高知港の港湾設備、幅は神戸工場の船台、喫水は寄港地の水深に合わせて決定されました。

船内インテリアは、「太陽と緑、そして紺碧の海と青」を基本モチーフとし、自然の素材感を活かした上品で落ち着いた雰囲気を演出しました。客室は、個室または寝台が全体の3分の2、大部屋が3分の1という構成でした。

時代とともに変化した船内設備は、ディスコ、レストラン、バー、プール、ゲームコーナーなど、多様なエンターテイメント施設を備え、乗客に快適な船旅を提供しました。

事故・インシデント

1977年1月30日、川崎重工業神戸工場で改装工事中の『さんふらわあ』は火災に見舞われました。溶接作業の火花が原因とされ、船内の一部が焼損しましたが、乗組員と作業員は全員無事でした。

『さんふらわあ』は、日本のフェリーの歴史において重要な役割を果たした船であり、その豪華な設備と長い航海の歴史は、多くの人々の記憶に刻まれています。

もう一度検索