しゅんこう型巡視船

しゅんこう型巡視船：尖閣諸島警備の要

2012年の尖閣諸島国有化以降、同諸島周辺海域における中国公船の活動が活発化しました。領海侵入や徘徊といった事案の増加を受け、海上保安庁は既存の巡視船による警備体制を強化しましたが、中国側の体制強化も著しく、更なる増強が必要となりました。

こうした状況を踏まえ、2016年度第2次補正予算において、海上保安体制強化のため過去最大の予算が計上されました。その中で、「しゅんこう」型巡視船の建造計画が承認され、尖閣諸島周辺海域の警備強化、および大規模事案への対応能力向上を目指した新型巡視船の建造が始まりました。

設計と建造

「しゅんこう」型は、既存のふそう型巡視船をベースに設計された汎用型PLH（Patrol vessel Large with Helicopters）です。同時期に建造された「れいめい」型巡視船が軍艦構造を採用したのに対し、「しゅんこう」型は商船に準じた構造を採用することで、建造費を約35%削減することに成功しました。ネームシップの建造費は172億円でした。

船型は排水量型を採用し、「れいめい」型と類似した船容ですが、全長は約10メートル短くなっています。搭載艇の数は片舷あたり1隻ずつ少なく、全天候型救命艇は搭載されていません。そのため、航行区分は近海となっています。また、後部マストは「れいめい」型とは異なり、ラティス構造となっています。

長期にわたる警備活動や災害対応を想定し、清水や食料の搭載スペースを確保。災害対応区画も設置されています。「あきつしま」型巡視船と同様に、居住区画の配置や振動抑制も改善され、乗員の居住環境向上に配慮した設計となっています。

最高速度は25ノット以上とされ、「しきしま」型巡視船と同様に4基のディーゼルエンジンによる2軸推進を採用しています。単機出力は9,000馬力と、「れいめい」型と同等の出力を持つと推測されています。

装備と機能

兵装は、70口径40mm単装機関砲1基と20mm多砲身機関砲2基を搭載。「あきつしま」型と比較すると、格納庫上部の40mm機関砲が20mm多砲身機関砲に変更されています。その他、遠隔放水銃、停船命令等表示装置、遠隔監視採証装置なども搭載されています。

「しゅんこう」型は、巡視艇など他船への支援能力も備えています。片舷4ヶ所の係留ポストを設置し、清水、燃料、電力などの供給が可能です。乗員の休養を支援する母船機能も有しています。ヘリコプターはスーパーピューマ225を2機搭載可能です。搭載艇は計4隻と、「れいめい」型よりも2隻少ないです。

まとめ

「しゅんこう」型巡視船は、尖閣諸島周辺海域の警備強化という喫緊の課題に対応するため、コストパフォーマンスに優れた設計と、高い運用能力を両立させた巡視船です。中国公船の活動が活発化する中、日本の海上保安体制強化において重要な役割を担っています。 建造費を抑えつつ、乗員の居住環境の改善や他船への支援機能など、実用性を重視した設計が施されている点が大きな特徴です。今後の海上保安活動において、その活躍が期待されます。

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