じゃない方芸人

じゃない方芸人：陰から光へ、芸人の逆襲物語

主に日本のお笑いコンビやグループでみられる現象として、「じゃない方芸人」という言葉があります。これは、コンビやグループ内で知名度や人気に大きな差が生じた際に、比較的知名度の低い、または影に隠れがちなメンバーを指す表現です。

言葉の起源と広がり

「じゃない方芸人」という表現自体は、2004年頃には既に「TIMのゴルゴ松本じゃない方」といった形で使われていました。しかし、この言葉が広く認知されるようになったのは、2009年頃からテレビ朝日『アメトーーク!』やTBS『水曜日のダウンタウン』といった人気番組で取り上げられるようになったことが大きな要因です。これらの番組では、知名度の低い芸人を特集する企画が放送され、「じゃない方芸人」というキーワードが浸透していきました。

バレティ番組における「じゃない方芸人」

バラエティ番組では、「じゃない方芸人」の知名度の低さや目立たなさが、笑いのネタとして頻繁に取り上げられます。しかし、近年では視聴者の多様化も進み、「じゃない方芸人」の個性や、その存在感の無さ自体を楽しむ視聴者も増えています。

『アメトーーク!』では、2009年以降、「〇〇じゃない方芸人」をテーマにした企画が複数回にわたって放送され、多くの芸人が出演しました。中には、街頭インタビューで名前がほとんど知られていない芸人もおり、その結果が笑いを誘いました。

『水曜日のダウンタウン』でも、お笑いコンビの知名度格差をテーマにした企画が複数回放送されており、「じゃない方芸人」のナンバーワンを決める企画なども行われました。また、番組内で「じゃない方芸人」の場面を意図的にカットする演出なども行われ、視聴者に笑いを提供する手法として成功を収めました。放送作家である今村クニト氏は、この手法を「じゃない方芸人の本領発揮」と評し、高い評価を与えています。

「じゃない方」イメージの活用

「じゃない方芸人」というイメージを逆手に取り、話題作りに繋げる芸人もいます。アンジャッシュの児嶋一哉氏は、相方の渡部建氏の活躍に対し、自身の短所をネタにすることで人気を獲得しました。また、ドランクドラゴンの鈴木拓氏は、相方の塚地武雅氏の活躍をネタにTwitterで炎上騒ぎを起こし、「炎上芸人」として注目を集め、テレビ出演が増加しました。コラムニストのペリー荻野氏は、日本人の「判官びいき」の心理が、鈴木氏の成功に繋がったと分析しています。

「じゃない方芸人」による企画

「じゃない方芸人」という呼び名が一般的になる以前にも、ツービートのビートきよし、紳助・竜介の松本竜介、B&Bの島田洋八の3名による「うなずきトリオ」が存在し、人気番組『オレたちひょうきん族』で人気を博しました。また、有吉弘行がプロデュースした「元祖・じゃない方芸人」ユニット『有吉命名☆ゴーストバスターズ』も、一時的に話題となりました。

イメージからの脱却とコンビ格差の変動

「じゃない方芸人」と呼ばれる芸人の中には、そのイメージを払拭できずにコンビが解散したり、コンビとして活動が難しくなるケースもあります。しかし、一方で「じゃない方芸人」からブレイクを果たし、活躍の場を広げる芸人も少なくありません。

オアシズの大久保佳代子氏は、当初は相方の光浦靖子氏に比べて仕事が少なかったものの、毒舌キャラで人気を獲得し、テレビでの露出が増えました。博多華丸・大吉の大吉氏も、『アメトーーク!』での自虐的なトークで個性を確立しました。

オードリー、フットボールアワー、ピース、麒麟、南海キャンディーズなど、多くのコンビで、当初「じゃない方」と呼ばれていたメンバーが、後に人気を獲得し、コンビ内の格差が逆転するケースも存在します。これは、芸人の個性が時間とともに変化したり、新たな才能が開花したりするなど、様々な要因が考えられます。

スポーツ界での類似例

スポーツ界にも、「じゃない方」に該当する例があります。柔道の篠原信一選手は、シドニーオリンピックで金メダルを逃したものの、引退後に芸能活動で成功を収めました。また、野球の田中将大投手は、高校時代は斎藤佑樹投手に注目が集まりましたが、プロ入り後は多くの活躍をし、大リーグへ移籍しました。

結論

「じゃない方芸人」という存在は、お笑い界の独特の現象と言えるでしょう。しかし、その影には、芸人たちの努力や才能、そして視聴者の多様な視点が潜んでいると言えるでしょう。一見不利な立場に置かれているように見える「じゃない方芸人」が、独自の個性を活かして成功を収める事例は、多くの人々に勇気を与えるものです。 彼らの活躍は、お笑い界のみならず、社会全体にポジティブな影響を与え続けています。

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