じょうぎ座

じょうぎ座（Norma）

じょうぎ座は、現代の88星座の一つであり、18世紀半ばに創造された新しい星座です。この星座のデザインは、製図や建築に使われる指矩をモチーフとしており、さまざまな文化や伝統の中で星座がどのように生まれてきたかを物語っています。日本では、じょうぎ座の全体が見えるのは主に十島村以南の地域です。

主な天体

じょうぎ座は比較的小さな星座で、周辺には明るい恒星がそれほど存在しません。実際、α星やβ星に相当する星は存在しないため、じょうぎ座の恒星の中で最も明るいのはγ2星と呼ばれる橙色の巨星です。この星の明るさは4.02等で、じょうぎ座の中では最も目立ちます。

また、じょうぎ座には多くの天体が存在します。特に、じょうぎ座全体が天の川の一部に位置しているため、星雲や星団が豊富です。中でも、NGC 6087という散開星団は非常に明るく、じょうぎ座の東南の隅にあります。また、アリ星雲として知られる双極性星雲もこの領域に存在し、その形状が昆虫のアリに似ているためこの名前が付けられました。さらに、じょうぎ座銀河団は、じょうぎ座とみなみのさんかく座の境界付近に位置しており、私たちの天の川銀河から約2億2000万光年の距離にあります。

由来と歴史

じょうぎ座に関する最古の記録は、古代の天文学者クラウディオス・プトレマイオスの著作『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース』にあります。この書物では、じょうぎ座に所属する恒星は特定の星座に属していないものとして記されています。フランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユが1756年に制作した星図に、じょうぎ座の線画が初めて登場し、当初はフランス語で製図用具を意味する解説が付け加えられました。

その後、1763年にはラテン語で「Norma」と呼称が変更され、1801年にはボーデの星図において指矩と直定規の象徴が描かれました。さらに、19世紀末にはアメリカの博物学者リチャード・ヒンクリー・アレンによって「ユークリッドの定規」を意味する名称も提唱されました。

1922年、ローマで開催された国際天文学連合（IAU）の設立総会では、じょうぎ座が正式に88星座に選定され、名称はNorma、略称はNorと定められました。新しい星座であるじょうぎ座に関連する神話や伝説は存在しませんが、その誕生の過程や星座についての研究は、天文学の発展と共に進められてきました。

また、じょうぎ座のアルファ星やベータ星は、この星座が設立された後、他の星座と関連づけられたことも注目されています。日本語では、1910年に『天文月報』で「定規」という訳名が登場し、その後も「じょうぎ」として定着しました。戦後においても、じょうぎ座の名称はそのまま使用され、今でも多くの人々に親しまれています。

まとめ

じょうぎ座は、星座の中でも特に新しいものではありますが、製図用具を象徴するその形状や星々の存在は、天文学の世界における人間の探求と創造の一端を示しています。少ない明るい星に反して、じょうぎ座には魅力的な天体が多く存在し、夜空を観察する際には是非注目してみてほしい星座の一つです。

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