すずらん丸

すずらん丸の歴史と特徴

すずらん丸（すずらんまる）は、新日本海フェリーが運航していた日本海の長距離フェリーです。この船は、日本海初の長距離フェリーとして、1970年代に舞鶴港と小樽港を結ぶ航路に就航しました。当時の平均航海速力は20ノットを超え、その速さから「海の新幹線」との愛称を持っていました。

1. 概要と就航の背景

1969年、阪九フェリーの成功したデイリー運航を受けて、新日本海フェリーが設立されました。これにより、内航貨物船を運航していた日本海航路にもフェリーサービスを導入し、すずらん丸はその第一艦として就航しました。船は冬期の厳しい日本海の海況に耐えるために、10,000トン級という当時最大の規模で設計され、三井造船の技術士指導のもとで幸陽船渠にて建造されました。

すずらん丸は、船首に遮浪ドームを備えていたことが特徴です。これはウインチの凍結を防ぐための設計でしたが、後に波がドームを滑り上がり、操舵室の窓を破損するといった欠点が現れ、その後このドームは取り外されました。

2. 航路と運航

1970年8月、すずらん丸は舞鶴～敦賀～小樽間の航路に週2便で就航しました。この運航では片道32時間を要しましたが、その速さは他の航路に比べて非常に効率的でした。

1975年には新日本海フェリーから東九フェリーに売却され、フェリー伊豆として東京～小倉間の直行便として再スタートを切りました。しかし、1977年に新日本海フェリーに戻り、フェリーライラックとして新潟～小樽航路に再就航しました。不運にも1979年に定期航路から引退し、その後は西日本商船（後の西日本汽船）に売却され、クルーズ客船として改造されました。

3. 運航の多様性と事故

西日本商船では、すずらん丸は「ゆうとぴあ」という艦名で運航され、日中友好の船として中国・青島との往復のチャーター便としても利用されました。また、1985年には特別な社葬にも使用されるなど、様々な行事で活躍しました。

1972年にはオホーツク海で着氷による通信途絶の事故が発生し、1973年には高波により船橋のガラスが破損するという事故もありましたが、幸いなことに乗員や乗客に負傷者はありませんでした。

4. 離脱と海外運航

1994年、すずらん丸は海外に売却され、ギリシャやアルジェリアの航路で運航されました。船名も数回変更され、最終的にはインドで解体されるまで様々な航海を重ねました。

5. まとめ

すずらん丸は新日本海フェリーの歴史の中で重要な役割を果たし、日本海におけるフェリー運航の基礎を築いた船でした。その速度と能力は、多くの旅客や貨物を運ぶ上で大いに貢献しました。また、数々の艦名変更や事故を経ても尚、海上輸送の一翼を担った存在として記憶されています。

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