ずるいねこのおはなし

概要

『ずるいねこのおはなし』(The Sly Old Cat) は、イギリスの著名な絵本作家であるビアトリクス・ポターによって1906年に発表された児童書です。彼女の最もよく知られた作品群である「ピーターラビット」シリーズに関連する物語の一つとして位置づけられています。この作品は、登場する動物たちのユーモラスな行動と、ずる賢い者が失敗する展開を通じて、読者に楽しみと教訓を提供します。

あらすじ

物語は、狡猾な性格の年老いた一匹の猫が、一匹のネズミを自身の家で行うティーパーティーに招待するところから始まります。この招きには、純粋な友好関係ではなく、猫のある隠された企みが込められていました。

パーティーは猫の家の台所で開かれます。しかし、客として招かれたネズミに対する猫の態度は、およそ礼儀をわきまえたものとは言えず、横柄で無礼な振る舞いが目につきます。そして、ティータイムが進むにつれて、猫はネズミに対して「紅茶を飲み終えたら、その後にデザートをいただくつもりだ」と何気なく、しかし決定的な一言を告げます。

この言葉を聞いたネズミは、瞬時に猫が自分を食後のデザートとして狙っていることに気づき、愕然とします。騙されてしまったことへの後悔と、迫りくる危機に対する恐怖にネズミは震えあがります。

危機を悟ったネズミが脱出の機会を伺う中、猫は大きなミルク壺に頭を深く突っ込み、無我夢中でミルクを飲み始めます。これがネズミにとっての好機となりました。ネズミは素早く台所のテーブルの上に駆け上がり、ミルクを飲むために逆さまになった壺の、ちょうど真上を向いている底の部分を、思い切り突きました。

ネズミの不意を突く行動と、壺の不安定な状態が相まって、ミルク壺は猫の頭にすっぽりとはまり込んでしまいます。視界を完全に失った猫はパニックに陥り、頭から壺を取ろうと必死にもがきながら、台所中をでたらめに駆け回り始めました。家具にぶつかり、食器棚を揺らしながら、その混乱は極に達します。

猫が自らの引き起こした騒動に気を取られている間に、ネズミは安全なテーブルの上に陣取り、落ち着いてティーパーティーを続けます。危うく命を落とすところだったネズミは、安心して紅茶を味わい、さらにテーブルの上に置かれていたマフィンの一つを手に取ると、それを持ち帰って家でゆっくりと食べました。

一方、頭に壺がはまった猫は、ネズミが立ち去った後も苦労を続けます。台所をさまよい続けた末、猫は最終的に、自身の頭にはまった重い壺をテーブルの角や壁に何度も何度も強く打ち付けることで、ようやく壺を壊し、頭を解放することができたのでした。

この物語は、体の大きさや力ではなく、知恵と機転がいかに重要であるかを示唆しています。ずる賢く他者を陥れようとする者は、結局は自らの策略によって滑稽な失敗を招くという、普遍的なテーマをユーモラスに描いた作品と言えるでしょう。

書籍情報

日本国内においては、福音館書店より間崎ルリ子氏による翻訳版が出版されています（2019年刊行、ISBN 978-4834084993）。

関連事項

* ビアトリクス・ポターの作品

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