ぜんまいばね

ぜんまいばねの概要

ぜんまいばねとは、弾性に優れた素材を螺旋状に巻いた機械要素の一つです。この巻かれた螺旋が元の形に戻ろうとする力を、機械装置の動力源として活用します。この装置は、特に山菜のゼンマイの新芽にその形状が似ているため、こう名付けられました。ぜんまいばねはその形状から渦巻きばねとも呼ばれ、単に「ぜんまい」と省略されることもあります。特に縦型に巻かれたものは「スルメ」と言われることがありますが、この名称は焼いたスルメが曲がる様子に由来しています。

利用方法

ぜんまいばねは通常、板状の金属のような材料が面方向に巻かれたものです。この構造により、中心の軸を通じて外向きに力がかかります。利用時においてこのばねが伸びるとローテーションを起こし、そのエネルギーを機械に変換することができます。特に、時計やおもちゃなどの動力源として重宝されます。例えば、時計の中に組み込まれるぜんまいばねを巻くための器具は「巻き鍵」と呼ばれます。

歴史をさかのぼると、江戸時代にはくじらのひげを利用したぜんまいがからくり人形に用いられていました。また、エコロジーやサバイバルの観点からも見直されており、省電力のデバイスや、自動ドアの補助動力としての活用、さらには水力[[発電]]機への転用も検討されています。特に、電力や電池が入手しづらい地域や災害時には、ぜんまい式のラジオやライトなどが製造され、需要が高まっています。

時計に使われることが多いS字型のぜんまいばねは、全体にかかる力を均等にして破損を防ぐ役割も果たしています。これにより、時間精度の向上も期待できるのです。

ぜんまいばねの歴史

現在知られている最初のぜんまいばねの利用例は、15世紀のヨーロッパに遡ります。この頃の時計は、重りを使った駆動方式が主流でしたが、1400年ごろからはばねを組み込む方法も普及していきました。興味深いことに、当時の時計職人は錠前師でもあったため、ぜんまいを使用した時計が現れるのは自然な流れだったと言えます。

この技術の進展により、従来の重り駆動式に比べ、よりコンパクトで持ち運びが容易な時計が製造されるようになり、1600年までには世界初の懐中[[時計]]が誕生しました。一般的には1511年ごろ、ニュルンベルクの時計職人ピーター・ヘンラインがぜんまいを発明したとされていますが、実際には1400年代からいくつかの携帯型時計の記録があり、ヘンライン以前のぜんまい式時計も存在していたことがわかっています。

現存する最古のぜんまい式時計は、ニュルンベルクのドイツ民族博物館に保管されている「ブルゴーニュ時計」で、1430年ごろにフィリップ3世（ブルゴーニュ公）のために作想されたとされています。

初期のぜんまいばねは、焼入れや焼き戻しがなされない鋼で作られていたため、完全に巻いても1日に2回の巻き上げが必要でした。ヘンラインは、1回の巻き上げで40時間動作する時計を設計したとも言われ、これが以後の時計技術の進化に寄与しました。

日本における著名なぜんまい式時計は、発明家の田中久重による万年自鳴鐘があります。このモデルは真鍮製で、ほぼ一年の稼働時間を持ち、その精密さは当時の技術を象徴しています。

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