そこにいなかった神

『そこにいなかった神』（The God Who Wasn’t There）は、2005年に公開されたブライアン・フレミング監督によるドキュメンタリー映画です。フランシス・シェーファーの著書『そこに存在する神』（The God Who Is There）のパロディとして制作され、リチャード・ドーキンスの著書『神は妄想である』でも取り上げられています。

この映画は、キリスト教の真実性を問い、信仰が善であるかを深く掘り下げています。キリスト教否定の立場から、キリスト神話説者へのインタビューを通じて、イエス・キリストにまつわる物語が、当時の周辺地域に存在した神話伝説からの借用によって成り立っているという主張を紹介します。現代において、その「借用元」である古代神話を信じる人がほとんどいないにもかかわらず、聖書の内容を信じることが特別視されることへの不自然さを、神話説論者の言葉を通じて訴えかけます。

さらに、「信仰が善であるか」という点に関して、信仰の名の下に行われた数々の犯罪や、宗教と政治の危険な結びつきに光を当てています。現代社会において、旧約聖書の律法に記された同性愛者や背教者の殺害が実行されないのは、宗教自体が現代化されているからに過ぎないと指摘し、宗教信仰、特にキリスト教根本主義を背景とした排他性や思考停止の危険性を強く警告しています。

映画の公開に合わせて、公式サイトでは「ザ・ブラスフェミー・チャレンジ」（The Blasphemy Challenge、冒涜チャレンジ）というキャンペーンが展開されました。これは、自身が聖霊を冒涜する様子を映像に収め、YouTubeにアップロードすれば、映画のDVDが無料でもらえるという、非常に挑発的な内容でした。マルコによる福音書3章29節では、イエス・キリストが「聖霊をけがす者はだれでも、永遠に赦されず、とこしえの罪に定められます」と教えていると解釈できるため、このキャンペーンは一部の信者にとっては恐ろしい行為と捉えられました。

映画をより深く理解するためには、以下の外部リンクも参考になります。

公式サイト（英語）
第4回　イエス・キリストの伝説はインチキ？　ドキュメンタリー『そこにはいなかった神』（映画秘宝.com）
キリスト教メディアによる監督へのインタビュークリスチャニティ・トゥデイ（英語）
The God Who Wasn’t There - IMDb（英語）

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