そよ風の贈りもの

ホイットニー・ヒューストン『そよ風の贈りもの』

『そよ風の贈りもの』（Whitney Houston）は、アメリカを代表する歌手、ホイットニー・ヒューストンが1985年に発表した記念すべきデビュー・アルバムです。このアルバムは、彼女の類まれな歌唱力とスター性を世界に知らしめ、その後の音楽シーンに多大な影響を与えました。

制作の背景

1983年、ホイットニーはナイトクラブでの歌唱がきっかけで、アリスタ・レコードの社長クライヴ・デイヴィスに見出され、レコード契約を結びました。しかし、デイヴィスはすぐに彼女をデビューさせるのではなく、「偉大な歌手には偉大な楽曲が必要だ」という信念のもと、最高のソングライターやプロデューサーを探し出すことに尽力しました。

その結果、ジャーメイン・ジャクソン、ナラダ・マイケル・ウォルデン、マイケル・マッサーといった一流のクリエイターたちが集結し、アルバム制作に携わることになりました。特に、マイケル・マッサーは「すべてをあなたに」を提供しましたが、ホイットニーの母シシー・ヒューストンは当初、娘が不倫を歌うことに難色を示したというエピソードも残っています。

収録楽曲と特徴

アルバムからは、「すべてをあなたに」「恋は手さぐり」「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」という3曲ものBillboard Hot 100で1位を獲得する大ヒットが生まれました。これらの楽曲は、ホイットニーの圧倒的な歌唱力と、洗練されたポップ・サウンドが融合した、まさに80年代を代表する名曲と言えるでしょう。

また、テディ・ペンダーグラスとのデュエット曲「ホールド・ミー」は、ホイットニーにとって事実上のデビュー・シングルとなりました。ジャーメイン・ジャクソンがプロデュースした「やさしくマイ・ハート」と「夢の中のふたり」では、ホイットニーとのデュエットも披露しています。

リリースと反響

アルバムの収録曲順は、アメリカ盤とヨーロッパ盤、日本盤で異なっています。日本盤LPは「恋は手さぐり」から始まる構成で、ジャケットもアメリカ盤とは異なるものが使用されていました。しかし、2010年に発売された25周年記念盤では、曲順・ジャケット共にアメリカ盤に準じた形に統一されています。

アルバムは、アメリカのBillboard 200とR&Bアルバム・チャートで1位を獲得し、RIAAによって13×プラチナに認定されるなど、商業的にも大成功を収めました。また、ホイットニーの死後には、Billboard 200で9位に再浮上するなど、その人気は衰えることを知りません。

海外では、ノルウェーのアルバム・チャートで9週連続1位、イギリスでは最高2位、ニュージーランドでは合計3週にわたり3位を記録するなど、世界中で高い評価を得ています。日本でも、オリコンLPチャートで最高4位を記録し、再発CDもオリコンチャートで最高66位を記録しました。

受賞と評価

『そよ風の贈りもの』は、第28回グラミー賞で最優秀アルバム賞にノミネートされ、ホイットニーは「そよ風の贈りもの」で最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞、「すべてをあなたに」で最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞にノミネートされ、最終的には最優秀女性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞しました。また、第29回グラミー賞では「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」で最優秀レコード賞にノミネートされました。

『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では249位、「オールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100」では84位にランクインするなど、批評家からも高い評価を受けています。

まとめ

『そよ風の贈りもの』は、ホイットニー・ヒューストンの才能が開花した、まさに記念碑的なアルバムです。彼女の圧倒的な歌唱力と、時代を超えて愛される楽曲の数々は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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