それでもボクはやってない

映画『それでもボクはやってない』

『それでもボクはやってない』は、2007年に公開された日本映画で、周防正行が監督を務めました。この作品は、痴漢冤罪をテーマにしており、日本の刑事裁判制度に対する疑問を提起する内容となっています。周防監督は、『Shall we ダンス?』以来、11年ぶりの新作として本作を制作しました。

映画の主人公は、フリーターの金子徹平（演：加瀬亮）。徹平は、就職面接へ向かう途中、混雑した電車内で女子中学生から痴漢行為を訴えられてしまいます。彼は無実を主張しますが、駅員室で取り調べを受け、その後警察に逮捕され起訴されます。徹平は示談に応じることを拒否し、法廷で自らの無実を証明しようと奮闘する姿が描かれます。

物語は、彼の無実を信じる家族や親友、元彼女たちの支えを受けながら進展します。徹平は、元判事の荒川弁護士（役所広司）とともに弁護団を組織し、目撃者の女性の証言を得るために努力します。証拠を固めるために再現ビデオを制作したり、法廷での証人尋問を行うなど、彼は真実を明らかにするために血を吐くような努力を続けます。しかし、運命は思わぬ方向へ進展します。

若手の大森判事が当初の担当裁判官として徹平の案件を引き受けますが、突如異動となり、検察寄りの室山判事が新たに担当します。この異動が、事態をより厳しいものにします。さらには、徹平のプライベートな情報が公になったり、検察の証拠も含め、彼を追い詰めていく要因となります。終局的には地方裁判所で懲役3か月（執行猶予3年）の有罪判決が下されますが、彼は控訴を果たします。

この映画は、観客に多くの疑問を投げかけており、マスコミ試写の後、その結果が有罪と無罪の判決投票として示されるなど、ユニークな試みも取り入れられています。映画はその後、第80回アカデミー国際長編映画賞に日本代表作品として出品されましたが、残念ながら落選しました。しかし、第31回日本アカデミー賞では優秀作品賞に選出されるなど、その評価は高まりました。

映画の制作の背景には、監督自身の体験が影響しています。周防監督は、痴漢冤罪事件をテーマにする中で、司法関係者への取材や傍聴を通じて、現実の刑事裁判の実態を世間に知らせることを目指しました。また、制作会社は、痴漢行為が犯罪である一方で、それによって生じる冤罪被害者の存在にも焦点を当て、広く社会へメッセージを発信しています。

『それでもボクはやってない』は、痴漢法規の適用や社会的偏見、そして冤罪の問題に対する深い考察を促す作品です。この映画を通じて、観客は痴漢冤罪の恐ろしさとその影響を改めて考えさせられることでしょう。

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