ただいま勤務中

『ただいま勤務中』（ただいまきんむちゅう）は、漫画家・辻灯子氏による日本の4コマ漫画作品です。氏にとって初めての連載作品であり、単行本化もされた記念碑的な代表作として知られています。

本作は芳文社発行の漫画雑誌『まんがタイムジャンボ』にて、1999年6月号から2003年10月号にかけて連載されました。単行本は「まんがタイムコミックス」レーベルより全3巻が刊行されています。作者のあとがきによれば、全3巻という巻数は氏の都合によるものだったとされています。

作品概要と特徴

物語の舞台は、女性交通警備員たちの勤務現場。主人公である春日陽子をはじめ、個性豊かな同僚たちが織りなす日々が、ドタバタコメディとして描かれます。交通誘導や雑踏警備といった仕事のリアルな一面と、登場人物たちの人間的な魅力が融合し、読者の笑いを誘う作品です。

作者の辻灯子氏は、本作以外にも「ただいま〇〇中」という類似したタイトルの作品を複数発表していますが、それぞれの作品世界に関連性はなく、本作の登場人物が他の作品に登場したり、その逆の展開があったりするような互換性はありません。

主要登場人物

本作を彩る個性的なキャラクターたちを紹介します。

春日陽子（かすがようこ）
物語の中心人物。20歳。交通警備員として働く真面目な頑張り屋ですが、その熱意がしばしば空回りし、トラブルを招くことも。身長が低く、現場で家出中の学生と間違われることもあります。夏休みに自動車運転免許を取得しており、本人は写真写りに自信があるようですが、同僚からは「路線が違う」と評されるなど、残念ながら色気とは縁遠いようです。恋愛事にはめっぽう鈍感。実家暮らしで、両親と弟と共に生活しています。お酒には全く強くない下戸です。

春日芳雄（かすがよしお）
陽子の父。45歳。娘である陽子を溺愛しており、息子には全く関心がない様子です。

春日萠子（かすがもえこ）
陽子の母。40歳。常にマイペースを貫く性格。娘にお見合いを勧める一方で、陽子が家を出た暁には、その部屋を自分の趣味の空間にしたいという目論見も持っています。

春日芳人（かすがよしと）
陽子の弟。17歳の高校生で、受験を控えています。姉よりもファッションや化粧に詳しく、食品の賞味期限にも敏感な一面があります。「春日弟」という通称で呼ばれることも。姉とその友人たちとの合コンを求められることもありますが、彼女たちの実情を知っているため、あまり乗り気ではありません。モテるタイプらしく、姉に隠れてこっそり自宅に彼女を招くといったエピソードも描かれています（ただし、中には偽の電話番号を渡されていた相手もいたようです）。

ミロ
春日家の飼い猫。陽子が交通警備の現場で偶然拾い、そのまま春日家の家族となりました。よく陽子を引っ掻いて困らせますが、母・萠子からは大変可愛がられています。元々は作者が「シロ」と名付ける予定でしたが、編集者の誤植により「ミロ」という名前になったという裏話があります。

夏木彩（なつきあや）
陽子の同僚。20歳。威勢が良く、面倒見のいい性格ですが、外見通りと言われるほど金遣いが荒く、電気を止められるほどの貧乏生活を送ることも。趣味はゲームで、徹夜をすることも多いようです。陽子に対しては「顔は十人並みの1ミリ上」と、褒めているのか貶しているのか曖昧な評価をしています。お酒に弱く、最終電車に乗り遅れたり、介抱してくれた相手に手を上げたりと、酒癖が悪いエピソードが頻繁に描かれます。物語初期には彼氏がいましたが後に別れ、その後は特定の恋人はいませんが、デートや合コンには積極的に参加している様子。同じ会社の上司である武藤に好意を寄せている素振りも見せます。陽子、彩、冴子の同僚トリオの中では唯一の喫煙者です。

冬月冴子（ふゆつきさえこ）
陽子の同僚。28歳。クールで現実的な思考の持ち主です。同僚の中では唯一特定の彼氏（塾講師）がいますが、仕事の関係ですれ違いが多く、倦怠期に悩んでいる様子。陽子や彩と比べて年上ということもあり、保護者のように振る舞うことが多いですが、時として自身が騒動の中心となることもあります。極度の近視で普段はコンタクトレンズを使用していますが、自宅などで分厚い眼鏡（牛乳瓶の底のようなレンズ）をかけている姿も描かれます。陽子たちとの年齢差を気にしており、成人式に関する話題が出ると「ハタチの時にしたわよ」と強がってごまかします。

秋田ほのか（あきたほのか）
陽子の同僚。天然ボケな発言で周囲を和ませたり、惑わせたりします。初登場時はすでに結婚しており、作中最後の登場シーンでは妊娠していることが、持っていた安産祈願のお守りから明らかになりました。彼女の天然っぷりからか、「冬月バスター」というあだ名で呼ばれることもあります。

梶（かじ）
陽子たちの直属の上司で、隊長。30歳。部下たちの個性に振り回される苦労人の中間管理職として描かれています。手当の面では現場の方が良かったものの、「生贄」のような形で隊長職に就かされたという噂もあるようです。新婚で、奥さんも元警備士という経歴の持ち主です。

武藤（むとう）
陽子たちと同じ会社の別チームの上司で、隊長。端正な顔立ちのイケメンです。仕事に対しては厳しく、実力のある人物ですが、意外に茶目っ気のある一面も持ち合わせています。左手の中指にプラチナリングを着用しており、婚約者がいる可能性が示唆されています。

書誌情報

単行本 - 芳文社より「まんがタイムコミックス」として刊行されました。
第1巻: 2002年5月15日発行（ISBN 4-8322-6251-3）
第2巻: 2003年1月23日発行（ISBN 4-8322-6277-7）
第3巻: 2004年1月22日発行（ISBN 4-8322-6318-8）

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