ちいちゃんのかげおくり

ちいちゃんのかげおくり

『ちいちゃんのかげおくり』は、あまんきみこによって書かれた児童文学作品であり、上野紀子が挿絵を担当しています。あかね書房から1982年に出版され、1983年には小学館児童出版文化賞を受賞しました。この作品は、太平洋戦争の悲劇を子供たちにも理解できるように描いた物語として、小学校の国語の教科書にも採用されています。また、合唱曲も作られるなど、広く親しまれています。

あらすじ

物語は、主人公である幼い女の子「ちいちゃん」と、その家族の日常から始まります。ちいちゃんは、父、母、兄との4人家族で、穏やかに暮らしていました。しかし、時代は戦争の真っ只中。父親に召集令状が届き、出征が決まります。出征前日、家族は先祖の墓参りに行き、その帰り道、父親は澄み切った青空を見て、「影送りができそうだ」と言います。影送りとは、太陽に向かって自分の影を送り、無事を祈る遊びです。家族4人で影送りをすると、それはまるで記念写真のようでした。

しかし、平和な日々は長くは続きません。ある夏の夜、空襲警報が鳴り響き、ちいちゃん一家は防空壕へ向かうために外へ飛び出します。逃げる途中、ちいちゃんは家族とはぐれてしまいます。非常食として持っていた干し飯を頼りに、ちいちゃんは一人で生き延びようとしますが、物語の最後では、栄養失調で亡くなったことが示唆されています。

登場人物

ちいちゃん: 物語の主人公。父親から影送りを教えてもらい、家族との温かい時間を過ごします。しかし、空襲で家族と離れ離れになり、過酷な状況に置かれます。
お父さん: ちいちゃんに影送りを教えた優しい父親。体が弱いながらも召集令状を受け取り、戦争へ出征します。出征前日に家族と影送りをし、戦地で命を落とします。
お母さん: ちいちゃんと兄を連れて空襲から逃げようとしますが、兄が怪我をしてしまいます。兄を背負い、ちいちゃんの手を引いて逃げる途中、ちいちゃんとはぐれてしまい、その後空襲で亡くなります。
お兄ちゃん: 空襲から逃げる途中で足を怪我してしまいます。母親に背負われて逃げますが、母親と共に空襲で亡くなります。
知らないおじさん: 空襲で家族とはぐれたちいちゃんを助けてくれた男性。「お母さんは後から来るよ」と慰め、ちいちゃんがお母さんらしき人を見つけたのを見届けて、去っていきます。
はす向かいのおばさん: ちいちゃんの家の近くに住む女性。家族とはぐれたちいちゃんと出会い、家があった場所まで一緒に向かいます。ちいちゃんの言葉に安堵し、自分の父親の家へ向かいます。


『ちいちゃんのかげおくり』は、戦争の悲惨さだけでなく、家族の愛情や絆、そして失われた命の尊さを描いた作品です。影送りのシーンは、平和な日常の象徴として、読者の心に深く刻まれます。子供たちはこの物語を通して、戦争の恐ろしさや平和の大切さを学ぶことができるでしょう。

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