ちかえもん

テレビ時代劇『ちかえもん』の概要

『ちかえもん』は、NHK大阪放送局が製作し、2016年1月14日から3月3日まで放送されたテレビ時代劇で、青木崇高と松尾スズキが主演を務めました。この作品は、近松門左衛門の著名な人形浄瑠璃『曾根崎心中』の成立過程に焦点を当てたヒューマンドラマであり、全8回のシリーズで構成されています。

企画と制作背景

本作の脚本は藤本有紀によって手がけられ、近松門左衛門という江戸時代の文人の生涯をフィクションとして描いています。近松は、かつて人々に広く称賛された作家でありながら、スランプに悩まされ、名作『曾根崎心中』を執筆するに至るまでの苦悩や人間関係をコメディータッチで表現しています。

近松は松尾芭蕉や井原西鶴と並ぶ三大文豪とされながらも、彼の人生についての詳細な記録はほとんど残されていないため、その生涯は謎に包まれています。『ちかえもん』では、そこに大胆な創作を加え、近松が直面した試練と復活の物語を描き出しています。

また、作品には現代的な言葉遣いやフォークソングの替え歌、アニメーションなどが散りばめられ、視聴者が楽しめる工夫が施されています。特に、近松の愛称「ちかえもん」は、視聴者に親しみやすい印象を与えています。

あらすじ

元禄16年（1703年）、近松はかつての栄光を失い、遊郭「天満屋」に通い詰めていました。彼の作品を上演する座も客足が遠のき、周囲の人々からの不満も強まり、創作活動は停滞していました。そんな中、「不孝糖」を売る渡世人・万吉と出会い、彼を相棒のようにみなすところから物語が動き出します。

万吉との出会いをきっかけに、近松は大衆が求める物語のスタイルの変化に気付き始めます。歴史をテーマにした過去の作品ではなく、現代の人々の感情や悩みに共鳴する作品が求められていることを理解し、少しずつ創作意欲を取り戻していきます。

登場人物

• - 近松門左衛門（演：松尾スズキ）: 主人公であり、文学者。作中では創作意欲を失った作家として描かれています。
• - 万吉（演：青木崇高）: 不孝糖を売る渡世人で、近松を支える重要な存在です。特異な性格で近松を鼓舞します。
• - お袖（演：優香）: 遊郭「天満屋」の遊女で、近松とのやり取りが描かれます。
• - 平野屋徳兵衛（演：小池徹平）: 豪商の息子で、物語に重要な役割を果たします。

その他にも、近松の母や遊郭に関わるキャラクターが登場し、彼の人間関係を深める要素となっています。

評価と受賞

本作は、放送終了後にも評価され、藤本有紀は第34回向田邦子賞を受賞しました。選考委員からは「快作」として高く評価され、時代劇作品として初の受賞となりました。また、作品は文化庁芸術祭賞の優秀賞も受賞し、多くの視聴者に愛されたことを証明しています。

このように『ちかえもん』は、近松門左衛門の人生の物語をユニークな視点から描いた作品であり、視聴者に新たな感動を与えることに成功しました。

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