つくば (巡視船・初代)

巡視船「つくば」(JCG つくば, PS-31)：銚子漁港の守護神

日本の水揚げ高を誇る銚子漁港。400～500隻もの漁船が集まるその漁港は、特定第3種漁港として早くから指定されるなど、国内でも有数の規模を誇ります。しかし、その立地は航行の難所として知られていました。狭く浅い水路、利根川河口という複雑な地形、そして河川流と波浪の衝突による三角波の発生など、安全な航行を阻む多くの要素がありました。こうした困難な状況下でも、迅速かつ効果的な救助活動を行うため、小型ながら高い能力を持つ巡視船の配備が求められていました。

その要請に応えるかたちで建造されたのが、海上保安庁の巡視船「つくば」(JCG Tsukuba, PS-31)です。PS（Patrol vessel Small）に分類され、公称船型は特130トン型。設計にあたっては、海上保安庁巡視船設計会議が設置され、外部の専門家も招へいして綿密な検討が行われました。

設計のポイント：困難な航行条件への対応

「つくば」の設計において最も重視されたのは、銚子漁港特有の航行困難な状況への対応です。浅い水路を航行するために、吃水の浅さが求められました。同時に、沖から河口へ向かう波の速度を上回る速力も必要不可欠でした。これらの要求を満たすため、高速艇型のV型船型が採用されています。しかし、主機関の出力は中速船の域にとどまり、設計上の最高速力は、実用上は若干不足していると言えるかもしれません。

また、万が一の浸水事故にも対応できるよう、高い安全性も確保されています。隣接する2区画が浸水しても沈没しないよう、複数区画にまたがる水密隔壁が設置されています。さらに、復原性にも配慮された設計となっています。船体外板には、4.5ミリ厚（一部は3.2ミリ厚）の鋼板が使用され、高い耐久性も備えています。

「つくば」の役割：漁港の安全を守る

「つくば」は、その高い航行性能と安全性によって、銚子漁港の安全を守る重要な役割を担っています。複雑な水路を航行し、迅速な救助活動や警備活動を行うことで、漁業の安全確保に貢献しています。その存在は、漁師たちにとって、まさに頼もしい守護神と言えるでしょう。

今後の展望

近年、海洋環境の変化や、漁業を取り巻く状況の変化など、海上保安庁の巡視船にはますます高度な能力が求められています。「つくば」の設計思想や技術的な特徴は、将来の巡視船の開発においても貴重な経験と知見として活かされていくことでしょう。

まとめ

巡視船「つくば」は、困難な航行条件を克服するために、高い技術と安全性を備えた、まさに特注の巡視船と言えるでしょう。その存在は、銚子漁港の安全を守るだけでなく、日本の水産資源を守るためにも重要な役割を果たしています。今後もその活動に期待が高まります。

もう一度検索