てぃーんず ぶるーす

原田真二「てぃーんず ぶるーす」： デビュー秘話と楽曲の変遷

1977年10月25日にリリースされた原田真二のデビューシングル「てぃーんず ぶるーす」。この曲は、フォーライフ・オーディション合格後、新興レーベル「フォーライフ・レコード」から発売された、トリプルシングル企画の第一弾として世に出ました。作曲は原田真二自身、作詞は松本隆が担当しています。

デビュー前の原曲

原曲は、原田が高校3年生の頃、広島の平和大通り沿いのベンチで書き溜めた作品の一つでした。「君の世代へ」というタイトルで、当時の社会問題であった暴走族や、若者世代へのメッセージ、そして世界平和への願いを込めた社会派の歌詞が特徴でした。原田自身はこの原曲をデビュー曲として強く希望していました。

デビュー曲決定までの葛藤

しかし、デビュー曲の選定は難航します。プロデューサーの吉田拓郎も原田のデビュー曲を用意しており、自作曲で勝負したい原田との間で意見が衝突。レコーディング地の箱根で明け方まで会議が続きました。最終的には、吉田拓郎にプールに突き落とされるというハプニング（松本隆が撮影！）を経て、原田の希望が通り、自作曲でのデビューが決定しました。この出来事を原田は「"てぃーんず ぶるーす" で行くぞっていうことだったと思う」と語っています。

トリプルデビューという異例の形

同時に、一度に良い曲がたくさんできたという評価から、「1曲では真二の魅力を伝えきれない」という判断が下されました。当時の所属事務所「アミューズ」の社長、大里洋吉のアイデアにより、1ヶ月ごとに3枚のシングルを連続リリースするという、異例のトリプルデビューが決定しました。

作詞・アレンジの変更

デビューにあたり、原田の原詞はストレート過ぎるという判断から、作詞家として松本隆が起用されました。松本は、元はっぴいえんどのメンバーで、ジョン・レノンに影響を受けていました。スタッフサイドは、ポール・マッカートニーを好む原田と松本を共作させることで「日本のレノン＝マッカートニー」の誕生を期待したそうです。

原田は、松本の歌詞について「反体制的なイメージを "ジェームス・ディーン" というキーワードで代弁してくれた」と語る一方で、当時は歌詞が軟弱に感じてショックを受けたと述懐しています。しかし、松本とのコラボレーションを通じて、歌詞の多様な表現方法を学んだことには感謝しているそうです。

松本は、「当時の男性アイドル歌手にありがちな、君が好きだ、俺について来い的なものではなく、男だって悩み苦悩するというのを歌詞にしたかった」と語っています。若さゆえの苦悩を表現できる存在として、原田に可能性を感じたのでしょう。

アレンジに関しても、原田のデモテープではスティービー・ワンダーのようなブルースハープが入り、アコースティックギターのカッティングを基調とした、洋楽ロックのようなイメージでしたが、キーボード主体のニューミュージック風に大きく変更されました。テレビではピアノを弾いて歌う演出も行われましたが、よりハードな仕上がりを望んでいた原田との間にはギャップがあったようです。

デビュー後の葛藤と武道館での原点回帰

自身の音楽が大人たちによって削られていくような感覚に葛藤を抱えた原田は、デビューから9ヶ月後の日本武道館公演で、レコードバージョンとは大きく異なるハードロック調のアレンジで「てぃーんず ぶるーす」を演奏しました。これは、原曲への思いを表現した、原点回帰とも言えるパフォーマンスでした。

楽曲のその後

「てぃーんず ぶるーす」は、その後も様々な形でリリースされています。アコースティックバージョンやオーケストラバージョン、ライブバージョンなど、多様なアレンジで原田自身によって再演されています。また、多くのアーティストによってカバーされており、その普遍的な魅力は時代を超えて愛され続けています。

レコーディングが行われた南箱根の旧ロックウェルスタジオは、後に原田が買い取り「Studio Modern Vision」として所有しています。また、宿泊した南箱根「ホテルダイヤランド」は廃墟となっています。

「てぃーんず ぶるーす」は、原田真二の音楽人生の原点であり、彼の葛藤と情熱が詰まった、特別な一曲と言えるでしょう。

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