ときめき (映画)

ときめき

昭和48年（1973年）、日本の大手映画製作会社である松竹株式会社によって世に送り出された一編の青春映画、それが『ときめき』である。メガホンを取ったのは市村泰一監督。多感な青春期をテーマに、当時の若者たちが抱える夢や悩み、そして甘酸っぱい人間模様を瑞々しく描き出した作品として知られる。

1970年代の日本映画界において、青春映画は一つの重要なジャンルを築いていた。松竹もまた、この分野で多くの作品を手掛けており、『ときめき』もその系譜に連なる一作と言える。当時の社会情勢や文化を背景に、若者たちの等身大の姿を描くことで、多くの観客、特に若い世代からの共感を集めたのである。

本作のキャストは、当時の人気俳優から、この作品でスクリーンデビューを飾った新人まで、多彩な顔ぶれが揃っている。主演を務めたのは栗田ひろみ。南美川杏子という役柄で、物語の中心を担った。そして、特筆すべきは、歌手としても人気を博していた浅田美代子氏と、後にアイドルとして一時代を築く桜田淳子氏が、本作で映画に初出演したという事実である。浅田美代子氏は自身の名と同じ役名で出演しており、桜田淳子氏は「歌手」という役柄を演じた。この二人のスクリーンデビューは、当時の映画界、芸能界において大きな話題となり、本作の注目度を高める一因となった。

他にも、沖雅也が水野役、秋谷陽子が江上早苗役、小倉一郎が氏家浩司役、川崎あかねが梅谷由香役、森次晃嗣が杉井久役、そして村野武範が江上和夫役として出演。それぞれの俳優が、物語の中で重要な役割を果たし、登場人物たちの織りなす人間関係に深みを与えている。彼らの若々しく、時には繊細な演技が、『ときめき』というタイトルにふさわしい、心の揺れ動きや輝きをスクリーン上に表現した。

映画製作を支えたスタッフ陣もまた、当時の日本映画を代表する面々が集結している。脚本を手掛けたのは石森史郎。人物描写や物語の構成によって、青春期の複雑な感情を描き出した。撮影監督は小杉正雄が担当し、光と影を用いて登場人物たちの心情や情景を美しく切り取った。製作は瀬島光雄、編集は杉原よ志が務め、作品全体の完成度を高めている。そして、音楽は小川寛興が担当。情感豊かな旋律で、青春の「ときめき」や切なさを表現し、観客の感動を誘った。

『ときめき』は、公開当時、『新・同棲時代 -愛のくらし-』と同時上映された。これは、当時の日本映画における一般的な公開形態の一つであり、異なるテーマやジャンルの作品を二本立てで上映することで、より幅広い観客層にアピールする狙いがあったと考えられる。『新・同棲時代 -愛のくらし-』が描く世界観との対比も、当時の映画ファンにとっては興味深い点であったろう。

このように、映画『ときめき』は、1973年という時代を背景に、多感な若者たちの姿を描いた青春映画である。市村泰一監督のもと、栗田ひろみや沖雅也、村野武範といった実力派俳優に加え、浅田美代子、桜田淳子といった将来のスターたちが集結。彼らの瑞々しい演技と、経験豊富なスタッフによる丁寧な作り込みによって、観る者の心に響く作品となった。特に、浅田美代子、桜田淳子の映画デビュー作としての歴史的な意義は大きく、二人のその後の華々しいキャリアを語る上で、本作は欠かせない一頁となっている。青春の輝きと、その中に潜む葛藤をリアルに描き出した『ときめき』は、当時の観客に感動と共感を与え、日本の青春映画の歴史にその名を刻んでいる。

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