ときわ (実験艇)

ときわ（Tokiwa）

ときわ（Tokiwa）は、防衛庁（現在の防衛省）技術研究本部が所有していた実験艇です。この艇は、掃海艇の設計においてガラス繊維強化プラスチック（GFRP）を活用するための研究を進める中で特に重要な役割を果たしました。

来歴

第二次世界大戦後、掃海艇の建造には主に木材が使用されていましたが、木材の価格上昇と製造技術者の減少に伴い、1970年代からはFRPの利用が注目されるようになりました。この流れに応じて防衛庁は、1973年度からFRP艇の研究開発を始め、1978年には初めてFRP製の掃海艇の機関部と同寸法の試作船体が完成しました。これらの試験では耐爆性能が特に優れており、掃海隊群の関係者に強い印象を与えました。

これらの研究の成果を基に、1978年度からは部分模型の試験と並行して実際の実験艇の建造が開始され、本船が完成しました。

設計

ときわは、掃海艇をGFRP化するための調査研究を目的に建造されました。外板はチョップド・ストランド・マットとロービングクロスが交互に重ねられた材料が使用され、船底は縦断式、船側と甲板は横肋骨構造を採用したコンバインド構造が特徴です。また、船型は平甲板型で、掃海艇に似た上部構造を持ち、全体的なデザインはあただ型[[掃海艇]]（28MSC）に類似しています。兵装を除き、艇内の配置も掃海艇とほぼ同様です。

運用

ときわは、竣工から昭和57年度には酷暑や厳寒の海域で長期航行テストが実施され、局部振動試験、音響透過試験、波浪中航走試験など多様な試験が行われました。しかし、この実験を通じて、当時の技術ではFRPの水中放射雑音の問題が解決できないことが明らかとなり、掃海艇のFRP化は見送られる結果になりました。

実際のFRP製掃海艇の採用は、技術が成熟した21世紀に入ってからのえのしま型（20MSC）まで待つことになります。試験終了後は、練習船12号として改装され、1983年には江田島市の海上自衛隊第1術科学校で運用が開始されました。

ときわは、1983年から2016年までの約33年にわたり運用され、この間に第1術科学校や幹部候補生学校に関与した学生たちは延べ20,900名に達し、実施された航海訓練は1,574回に及びました。これにより、総航程は208,016マイル、地球約9.6周分にも相当する距離を航行しました。

2016年3月22日に除籍されたときわは、FRP技術の発展を促した重要な存在であり、その成果は現在の掃海艇に引き継がれています。

参考文献

• - ウィルトン (掃海艇) - イギリス海軍の掃海艇で、世界初のFRP製船体を有しています。

もう一度検索