日本架空説

アルバム『日本架空説』の概要

『日本架空説』（にっぽんかくうせつ）は、シンガーソングライターのさだまさしが2000年9月21日に発表したソロの26枚目のオリジナル・アルバムです。この作品は、さだの深い愛情が込められた日本の美しい情景をテーマに構成されています。タイトルには、「このような美しい日本は果たして最初から存在していたのか？」という疑問が隠されており、1995年に発表した『さよなら にっぽん』と同様に、日本の現状への憂いを逆説的に表現しています。

当アルバムのレコーディングは、さだがロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでコンサートを行ったことに伴い、ロンドンのスタジオ（Air Lyndhurst及びアビー・ロード・スタジオ）でも一部進められました。ジャケットに描かれた題字は、さだの親友である画家の原田泰治によるものです。

収録曲の紹介

アルバムには複数の楽曲が収められており、それぞれ異なる物語が展開されています。

1. 飛沫（しぶき）

この楽曲では、横断歩道で手をあげて待つ子どもを描写し、大人に対する信頼の象徴としています。しかし、その信頼が裏切られる様子も描かれており、子どもたちが持っていた信頼が消えていく過程が切々と歌われています。

2. 風炎（フェーン）

恋人との別れの悲しみを、春の終わりを告げるフェーン現象に重ね合わせた作品です。この曲によって、季節の移ろいや心象風景のコントラストが表現されています。実は「フェーン」という言葉は、気象学者の岡田武松が考案したもので、さだが自らの創造ではないことが興味深いポイントです。

3. アパート物語

この曲は、さだの学生時代からグレープ時代を通じて住んでいたアパートを元に作られたものです。そのアパートにはのちにさだのマネージャーとなる山下純二も住んでいました。

4. 城のある町

香川県丸亀市の100周年を祝うために作られたイメージソングで、原田泰治が描いた春夏秋冬の絵を思い起こさせます。この歌詞中には架空の郷土料理「月菜汁」が登場し、市民によって実際に作られる試みが行われています。

5. 天空の村に月が降る

長野県の美しい棚田を題材にしたこの作品は、さだの鑑賞した岩永辰尾の写真集からインスピレーションを受けています。水面に映る月の美しさが描かれ、聴く者の心を引きつけます。

6. The Day After Tomorrow ～明後日まで～

ビートルズの「イエスタデイ」に寄せるアンサーソングであり、ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサート直前に制作されました。特異なエピソードは、急遽その日のうちに歌詞が作成され、初めて歌唱されたことです。

7. 舞姫

森鴎外の小説をテーマに、一途な愛を待ち続ける女性の物語を描いています。切ない心情が込められています。

8. 八ヶ岳に立つ野ウサギ

この曲では、地方医療に携わる実在の医師たちがモデルになっています。さだの過去の楽曲から名付けられたり、引用されたりして、その背景を感じさせます。

9. 月蝕

月蝕の夜に行われる祭の様子と、恋人との別れを描く歌です。これは、古来の祭の精神を自らの解釈で表現されたものだそうです。

10. 最期の夢

人生の最後にどんな夢を見たいか、という深い問いをモチーフにした楽曲です。このテーマは、さだが自らの一生を賭けた質問として特別な意味を持っています。

まとめ

アルバム中の全曲は、さだまさしが作詩・作曲を手掛けており、複雑で多様な感情が織り交ぜられています。アレンジは渡辺俊幸が担当し、特に「城のある町」は倉田信雄によって編曲されています。演奏には多くの才能あるミュージシャンが参加しており、特に石川鷹彦や松原正樹のギター、倉田信雄のピアノ、ロンドンセッションオーケストラのストリングスが印象的です。さだまさしの音楽が、聴く人々に深い感動を与え続ける所以が、このアルバムに集約されています。

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