どぶろくの辰 (1962年の映画)

『どぶろくの辰』(1962)：北海道の荒野を生きる男の物語

1962年4月25日、稲垣浩監督、三船敏郎主演により公開された映画『どぶろくの辰』。本作は、1949年に田坂具隆監督によって既に映画化されている中江良夫原作作品を、再び映画化したものです。舞台は北海道の森深く、過酷な道路建設プロジェクトに従事する労働者たちの姿が描かれています。

主人公の辰は、読み書きのできない粗野な男ですが、その内面には深い優しさや義侠心、そしてたくましい生命力を感じさせます。周囲は酒好きで喧嘩っ早い仲間ばかりですが、辰は彼らの中で独自の立場を築き、時にユーモアを交えつつ、過酷な環境を生き抜いています。

建設現場で働く辰は、飯場の洗濯女であるしのに恋をします。しかし、しのは辰の求愛を拒絶。それでも辰は、邪悪な職長の誘惑からしのを守ろうと奔走します。やがて、辰は報復を恐れて現場から逃亡。しかし、逃亡中に、ライバルの作業班がかつての仲間を襲撃しようとしていることを知ります。

この時、辰は自己保身か、仲間への忠誠心かの究極の選択を迫られます。辰の葛藤、そして彼が下す決断とは？

過酷な環境と人間模様

本作は、単なるアクション映画ではありません。北海道の厳しい自然環境、そしてそこで働く労働者たちの生き様をリアルに描写することで、人間の強さと弱さ、友情と裏切り、そして愛と憎しみといった複雑な人間模様を浮き彫りにしています。

三船敏郎は、辰の粗野さと優しさ、強さと脆さを巧みに演じ分けています。脇を固める三橋達也、淡島千景、池内淳子ら名優たちの演技も素晴らしく、作品全体に深みを与えています。

スタッフロール：名匠たちの技

監督は数々の名作を世に送り出した稲垣浩。脚本は井手雅人、八住利雄というベテランコンビが担当し、山田一夫による撮影、植田寛による美術、石井歓による音楽など、スタッフ陣も豪華な顔ぶれです。

特に、北海道の雄大な自然と、過酷な労働環境をリアルに描写した山田一夫の撮影技術は高く評価されています。また、石井歓の音楽は、作品の雰囲気を盛り上げ、見る者の感情を揺さぶります。

二度目の映画化

『どぶろくの辰』は、1949年に田坂具隆監督によって既に映画化されています。稲垣浩監督版は、原作を忠実に再現しつつも、稲垣監督独自の演出によって、よりドラマチックで、人間味あふれる作品に仕上がっています。

まとめ

『どぶろくの辰』は、過酷な環境の中で生きる人間の強さと弱さ、友情と裏切り、そして愛と憎しみを描いた、人間ドラマです。三船敏郎をはじめとする名優たちの熱演、そして名匠たちの技が光る、見応えのある作品です。北海道の厳しい自然と、そこで生きる人々の姿を、ぜひ劇場でご覧になってください。

主要キャスト

三船敏郎：どぶろくの辰
三橋達也：舎熊（棒頭）
淡島千景：梅子（「のんき」の女将）
池内淳子：下北しの（飯場の洗濯女）
有島一郎：追分
その他多数

スタッフ

製作：田中友幸
監督：稲垣浩
脚本：井手雅人、八住利雄
撮影：山田一夫
美術：植田寛
原作：中江良夫
編集：武田うめ
音楽：石井歓
擬闘：久世龍
助監督：高瀬昌弘

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