のっぺらぼう

のっぺらぼう：目・鼻・口のない妖怪の世界

のっぺらぼう（野箆坊）は、日本の伝説に登場する独特な妖怪で、その特徴は何といっても、顔に目、鼻、口がないことです。この妖怪は古くから多くの物語の中に描かれており、特に落語や講談などのジャンルで語り継がれてきました。

国民的妖怪の姿

外見は人間に似ていますが、その顔には驚くべき特徴があります。何もない平坦な顔が、時に人々を驚かせるために現れるのです。のっぺらぼうは、小泉八雲の『怪談』にも登場し、特に貉（ムジナ）との関係が注目されることがあります。妖怪に遭遇した際、多くの物語では何らかの動物がその正体として示されることが多く、特にタヌキやキツネが変身した姿とも言われています。また、のっぺらぼうはしばしば肉塊の妖怪「ぬっぺふほふ」と同一視されたり、両者の関連が考察されています。

代表的な物語と伝承

のっぺらぼうが登場する物語の一つに、明和4年（1767年）の怪談集『新説百物語』があります。ここでは、京都の二条河原に目鼻のない化け物「ぬっぺりほう」が現れ、遭遇した人々を恐れさせた事例が語られています。このように、のっぺらぼうはその正体不明の姿で人々を脅かす存在として描かれることが多いです。さらに、寛文3年（1663年）の『曽呂利物語』にも、のっぺらぼうの存在が言及され、こちらも正体が未記載である点が印象的です。

小泉八雲の影響

小泉八雲の著作『貉』では、のっぺらぼうの名こそ出てこないものの、その恐怖の要素を取り入れています。物語の中で、商人が目も鼻も口もない女性に出会い、驚愕する場面が描かれています。このような恐怖体験が、のっぺらぼうのイメージを強く形成してきたと言えるでしょう。また、別の場面では釣り人が蕎麦屋に駆け込み、そこで再び目鼻のない顔を見せられるという「再度の怪」の筋立てが見受けられ、のっぺらぼうと同様の印象を受ける場面が描写されています。

中華圏の類似表現

日本だけでなく、中国の文献にも似たような妖怪が登場します。紀昀の『閲微草堂筆記』や『夜譚随録』では、目も鼻も口もない若い女性の姿が描かれ、その描写はのっぺらぼうを連想させるものです。これにより、のっぺらぼうが特定の地域に限らず、広く存在している妖怪の一種であることが分かります。

幽霊や怪異の影響

のっぺらぼうは「再度の怪」としても知られ、二度にわたって人を驚かせる物語の中で重要な役割を果たしています。多くの類話が存在することからも、のっぺらぼうの存在は人々の心の中に強く根付いていることが伺えます。

現代における理解

現代においても、のっぺらぼうは凹凸がない状態を表現する言葉として用いられたり、無個性な人物を象徴する言葉として使われています。この妖怪の特異な特性は、現代の人々にも幅広く受け入れられているのでしょう。日本の文化や伝統における妖怪として、今もなおその影響は色濃く残っています。

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