はじまりへの旅

映画『はじまりへの旅』解説

『はじまりへの旅』（原題：Captain Fantastic）は、2016年に公開されたアメリカ映画。マット・ロスが監督を務め、ヴィゴ・モーテンセンが主演を務めるヒューマンドラマです。文明社会から隔絶された自然の中で独自の生活を送る家族が、予期せぬ出来事をきっかけに社会との関わりを余儀なくされる姿を描いています。

あらすじ

ベン・キャッシュと妻のレスリーは、6人の子どもたちと共に、ワシントン州の深い森の中で暮らしていました。資本主義的な価値観や現代アメリカのライフスタイルに疑問を抱いたベンとレスリーは、子どもたちにサバイバル術や哲学を教え、自給自足の生活を送っていました。子どもたちは、高度な知識や批判的思考力を身につけ、肉体的にも鍛えられ、テクノロジーに依存しない生活を送っていました。

しかし、レスリーが双極性障害で入院し、その後自ら命を絶ってしまいます。ベンは、レスリーの葬儀について義父のジャックと意見が対立。レスリーの遺志である火葬を望むベンに対し、ジャックは土葬を主張します。最終的に土葬が決まり、ベンは葬儀への参加を見送ることにしますが、子どもたちを連れて葬儀を妨害しようと旅に出ます。

旅の中で、子どもたちは初めて社会と触れ合い、様々な経験をします。そして、家族はそれぞれの価値観を見つめ直し、新たな一歩を踏み出していくことになります。

キャスト

ベン・キャッシュ：ヴィゴ・モーテンセン
ボー：ジョージ・マッケイ
ヴェスパー：アナリス・バッソ
キレアー：サマンサ・アイラ―
レリアン：ニコラス・ハミルトン
ツァイア：シュリー・クルックス
ナイ：チャーリー・ショットウェル

製作の背景

監督のマット・ロスは、自身が親として下す決断に疑問を感じたことが、本作の制作のきっかけになったと語っています。彼は、現代のテクノロジー社会において、自分の子どもたちの人生に深く関わることの難しさを感じ、もし常に子どもたちのそばにいられたらどうなるだろうかと考えました。また、自身が「違う生き方を選ぶ人々」の中で育った経験も、映画に反映されていると述べています。

評価

本作は、批評家から肯定的な評価を受けました。Rotten Tomatoesでは、80%の支持率を獲得し、「考えさせられるテーマ、ヴィゴ・モーテンセンの魅力的な演技、そして予想外の展開が、素晴らしい家族ドラマを作り上げている」と評されています。Metacriticでは、100点満点中72点の評価を得ています。

しかし、The GuardianのPeter Bradshowは、本作を「浅はかで退屈」と酷評しています。

受賞

第69回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 最優秀監督賞（マット・ロス）

『はじまりへの旅』は、家族の絆、教育、社会との関わり方など、様々なテーマを問いかける作品です。ヴィゴ・モーテンセンの演技をはじめ、キャストの熱演、美しい自然の映像、そして心に響く音楽が、観る者の心を揺さぶります。

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