はまゆり (遊覧船)

はまゆりの歴史とその被災

概要

はまゆりは、岩手県釜石市に属する遊覧船で、釜石市の観光振興を目指して設計されました。1997年4月2日に就航し、その名前はスカシユリに因んでいます。船の建造は横浜ヨットが担当し、釜石市から岩手県観光開発公社に委託され、基本設計は公募プロポーザルに基づいて決定しました。設計・建造監理は日本造船技術センターが行い、遊覧船としての運航は毎年4月上旬から1月末までが通常でした。

運行内容と特性

はまゆりは、観光客向けに「釜石湾絶景巡りコース」と「三貫島めぐり豪快コース」の運航を行い、1日に3便から最大5便までの便を持ち、朝晩は釜石港湾口防波堤への交通船としても利用されていました。

設計に関しては、軽合金で作られた翼付高速双胴船で、ディープV型の船体が波浪中の運動を低減するために設計されています。そのため、左右の胴体間には水中翼が装備され、波の影響を受ける上下の加速度を抑えています。主機関は防振ゴムで支えられ、振動と騒音を低減する工夫が施されています。プロペラには5翼の固定ピッチハイスキュードプロペラが採用されていました。

東日本大震災による被災

2011年3月11日の東日本大震災では、はまゆりは大槌町のドックで点検作業中に津波に遭遇しました。陸に乗り上げ、その後2階建ての民宿の屋根の上に取り残されるという衝撃的な状況になりました。このような光景から、「屋根の上の船」として象徴的な存在となり、津波被害の象徴として残すべきだという考えもありました。しかし、余震による転倒や落下の危険を考慮し、釜石市は解体を決定しました。

解体は2011年5月に行われ、その後復元計画が持ち上がりました。この復元には4億5千万円が必要とされましたが、進捗は遅く、2015年12月までに集まった寄付金はわずか355万円でした。さらに、2019年3月時点では370万円にとどまり、復元計画は難航していました。そして、2020年8月には復元の断念が公式発表されました。

はまゆりが乗り上げた民宿についても、2020年8月に取り壊しが決まった後、2021年2月にその撤去が行われました。釜石市はこの出来事を伝承するために、模型やデジタル技術を利用した方法を模索することを発表しています。

このように、はまゆりは被災の象徴としての役割を捨て去ることとなりましたが、その歴史は人々の記憶に長く残ることでしょう。

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