はるか (人工衛星)

はるか（MUSES-B）

はるか（MUSES-B）は、宇宙航空研究開発機構が手がけた電波天文衛星であり、1997年2月12日に鹿児島宇宙空間観測所からM-Vロケットの初号機により打ち上げられました。この衛星は、宇宙の様々な謎に挑むことを目的に開発され、実験に関わる研究者たちの投票によって、その名称が命名されました。また、英語名のHALCAは「Highly Advanced Laboratory for Communications and Astronomy」の略称です。

設計

はるかは、主に電波天文学に利用されることを目的としていますが、MUSESシリーズに属するため、正式には工学試験衛星として分類されています。衛星の本体は1.5m x 1.5m x 1.0mの箱型設計で、大型の展開式アンテナが上部に搭載されています。質量は830kgで、地球を周回する長い楕円軌道を運用していました。

主光学系にはカセグレン式が採用されており、主鏡の直径は最大10m、実効径は8mです。副鏡は主鏡から3.4mの位置に取り付けられており、主鏡の反射面は金メッキされたモリブデンワイヤーメッシュで構成されています。主鏡は6本の高剛性伸展マストとテンショントラスケーブルで支えられており、鏡面精度は0.5mm rmsという高精度が求められました。

地上とのデータ通信は非常に重要で、128Mbpsの大容量伝送が実現されています。観測は1.6GHz、5GHz、22GHzの3つの周波数帯で行われ、多様な観測が可能です。特に、世界初のスペースVLBI（超長基線電波干渉法）観測を実現するための装置も搭載されており、地球上の電波望遠鏡との連携が図られました。これはVSOP計画の一部として実施されました。

運用

打ち上げ直後、衛星は22GHz帯の周波数で感度が低下したことが明らかになり、残りの2つの周波数に基づく観測にシフトしました。同年の2月28日には、主鏡の展開が無事完了し、本格的な観測が開始されました。

はるかの運用は2005年11月30日に終了しました。運用終了にあたり、残った燃料を投棄するための指令が地上から出され、停波指令が発信されました。当初の予定では3年の運用が見込まれていましたが、はるかは8年9ヶ月という長期にわたる運用を成功させました。

その後、2006年にはVSOP2計画として次の電波天文衛星、ASTRO-Gの開発が発表されましたが、技術的な難航によりこのプロジェクトは中止されました。やはり、はるかの成功は日本の宇宙科学において重要な意味を持っており、後の研究と技術開発に大きな影響を与えました。

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