はるき悦巳

はるき悦巳：大阪下町の風情と人情を描く漫画家

はるき悦巳氏は、1947年生まれの日本の漫画家で、大阪の下町を舞台にした人情味あふれる作品で広く知られています。本名は非公開。ペンネームは当初「春木悦巳」でしたが、デビュー作『政・トラぶっとん音頭』の受賞時、誤記されたことをきっかけに「はるき悦巳」に改名しました。

作風と個性

はるき悦巳氏の作品は、大阪の下町の人々や文化を細やかに描き、そこに流れる温かい人間模様が魅力です。代表作である『じゃりン子チエ』は、チエとその周りの人々の日常を描いた長編作品で、アニメ化や舞台化もされるほどの人気となりました。独特の作風は、アシスタントを一切雇わず、独学で培われたもので、スクリーントーンを使用しないなど、独特の表現方法が特徴です。

氏は自身のことを「生来の怠け者」と称し、面倒なことは嫌う一方で、ジャズレコード鑑賞や映画鑑賞、読書など、独自の趣味の世界を持っています。また、ヘビースモーカーである一方で酒は飲めず、パソコンや携帯電話にも不慣れな、現代社会とは少し距離を置く生活を送っています。若い頃は大きな絵を描くことを専門としていましたが、場所を取るため、作品を縮小することを考え、漫画へと転向しました。

『じゃりン子チエ』の主人公、小林マサルははるき氏自身をモデルとしており、そのキャラクターを通して、自身の若い頃の心情を表現しています。作中でマサルの相棒であるタカシは、元アシスタントのいわしげ孝氏をモデルにしています。

はるき悦巳の生涯

はるき氏は大阪市西成区に生まれ、その後住吉区、そして東京へと移り住みました。多摩美術大学油絵科卒業後、東京で様々なアルバイトをしながら漫画家を目指し、30歳前後から出版社に作品を持ち込み始めました。1978年、『政・トラぶっとん音頭』で漫画家デビュー。その後、『じゃりン子チエ』の大ヒットにより、全国的な知名度を獲得しました。

『じゃりン子チエ』の連載は19年間に及びましたが、高齢の母親の介護問題を理由に1997年に終了しました。同作品以外にも、『どらン猫小鉄』『ガチャバイ』など、数々の作品を発表。多忙な時期には、アシスタントを募集した時期もありましたが、基本的には一人で作品制作を行うことを好んでいます。

東京での生活に疲弊した氏は、家族とともに兵庫県西宮市に移住。その後も精力的に作品を発表し続け、Webマガジンで『帰って来たどらン猫』シリーズを連載するなど、現在も創作活動を続けています。

交流関係と影響

はるき氏は漫画原作者の小池一夫氏や狩撫麻礼氏らと交流がありました。また、つげ義春氏の作品を深く敬愛しており、特に初期の作品にはその影響が強く見られます。

受賞歴

1977年：第1回平凡劇画賞 佳作入選（『政・トラぶっとん音頭』）
1980年：第26回小学館漫画賞 青年一般部門受賞（『じゃりン子チエ』）

代表作品

『じゃりン子チエ』
『どらン猫小鉄』
『ガチャバイ』
『帰って来たどらン猫』シリーズ

はるき悦巳氏は、独自の作風と、大阪下町の人情味あふれる描写で、多くの読者に愛される作品を生み出し続けている漫画家です。その人生と作品は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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