狩撫麻礼

狩撫麻礼（カリブマレイ）：変幻自在の漫画原作者

狩撫麻礼（かりぶ まれい、1947年 - 2018年1月7日）は、数多くの別名義を使い分け、多岐にわたるジャンルで独創的な作品を世に送り出した、日本の漫画・劇画原作者です。カリブ・マーレィ、ひじかた憂峰、土屋ガロンなど、その変幻自在なペンネームの数々は、彼の創作活動の幅広さを物語っています。

生い立ちと影響

東京都の下町で少年時代を過ごした狩撫は、高校時代に白土三平の『カムイ伝』から強い影響を受けました。様々な職を転々とした後、30歳で漫画原作者を志し、小池一夫主宰の「劇画村塾」に一期生として入門。ここで、劇画の基礎を徹底的に学びました。

デビューとヒット作

1979年、『シリーズ輪苦の長い旅 ザ・リミット』（画・園田光慶）で原作者としてデビュー。その後、『ア・ホーマンス』が松田優作主演・監督で映画化されたことを機に、『迷走王 ボーダー』、『土岐正造トラブルノート ハード＆ルーズ』などが次々とヒットし、人気作家としての地位を確立しました。

多様なペンネームとその理由

1995年以降、狩撫麻礼名義での作品発表は途絶え、作品ごとに異なるペンネームを使用するようになります。この理由について彼は、読者や編集部からの固定的なイメージを避けたかったこと、そして『タコポン』の反応が薄かったことから、新たなスタートを切るつもりで「狩撫麻礼」の名を封印したと語っています。単行本では、これらの別名義の後に「（狩撫麻礼）」とクレジットされることもあります。

国境を越えた評価

土屋ガロン名義で原作を手がけた『ルーズ戦記 オールドボーイ』（画・嶺岸信明）は、2007年にアイズナー賞最優秀日本作品部門を受賞。また、同作を原作とした韓国映画『オールド・ボーイ』（監督：朴贊郁）は、2004年のカンヌ国際映画祭で審査員大賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ました。その後、アメリカでもスパイク・リー監督によってリメイク版『オールド・ボーイ』が製作され、2013年に公開されています。

人となり

レイ・チャールズなどの黒人音楽、そしてレゲエミュージックに深く影響を受けた狩撫は、カリブとボブ・マーリーにちなんで「狩撫麻礼」というペンネームを名付けました。江口寿史の『江口寿史の正直日記』には、狩撫のマンションがビールとサンドバッグで埋め尽くされた「ハードボイルドな部屋」であったというエピソードが記されています。劇画村塾の同期である山本貴嗣の漫画には、彼をモデルにしたキャラクターが登場することもありました。

いしかわじゅんとの交流

週刊漫画アクションでの連載中、いしかわじゅんのエッセイ漫画で「パーティー嫌いのはずがパーティーでよく見かける」と揶揄された狩撫は、自身の作品でいしかわを痛烈に批判。その後、両者は和解しています。

主要作品

狩撫麻礼名義での代表作には、『East of The Sun,West of The Moon』（画・大友克洋）、『青の戦士』（画・谷口ジロー）、『ア・ホーマンス』（画・たなか亜希夫）、『迷走王 ボーダー』（画・たなか亜希夫）などがあります。また、別名義では、『ルーズ戦記 オールドボーイ』（土屋ガロン名義、画・嶺岸信明）、『湯けむりスナイパー』（ひじかた憂峰名義、画・松森正）などが知られています。

2018年1月7日、狩撫麻礼は70歳でその生涯を閉じましたが、彼の作品は今もなお、多くの読者やクリエイターに影響を与え続けています。

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