ひげも使いよう

トムとジェリー：ひげも使いよう

1955年11月12日に公開された『ひげも使いよう』(原題:Pecos Pest)は、長きに渡り『トムとジェリー』シリーズの制作に携わってきたフレッド・クインビーにとって最後の作品として知られています。4:3の標準サイズで制作された最後の作品でもある点が特筆されます。監督はウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラという、お馴染みのコンビです。

ストーリー

物語は、ジェリーがテキサスに住む叔父、アンクル・ペコスから電報を受け取るところから始まります。間もなくペコスがジェリーの家に到着し、自慢のギター演奏を披露するのですが、演奏中に弦が切れてしまいます。新しい弦を探し求めるペコスは、近くで眠っていたトムに目をつけます。なんとペコスは、トムのひげを無理やり引き抜き、ギターの弦として代用してしまうのです。

当然トムは激怒し、ペコスから逃げ回りますが、ペコスはテレビ出演を控えており、ギターの弦を修理する必要に迫られています。ジェリーが必死に止めようとするのも無視して、ペコスは執拗にトムを追いかけ、次々とひげを奪っていきます。最終的にはトムもペコスの執念に屈し、自らひげを提供する羽目になります。こうしてペコスはトムから5本のひげを手に入れ、テレビ出演のためにジェリーの住処を後にします。

翌日、トムとジェリーはペコスのテレビ出演の様子をテレビで見ますが、本番中にも関わらず、ペコスのギターの弦が再び切れてしまいます。トムはペコスの失敗を嘲笑いますが、その瞬間、テレビ画面からペコスの手が伸び出し、なんとトムの最後のひげを奪い取ってしまうのです。

作品の特色

この作品では、トムのひげの本数が通常の4本ではなく、初期作品と同様に6本で描かれている点が注目されます。これは、作品全体のコミカルな雰囲気を強調する演出と言えるでしょう。また、『トムとジェリーショー』シーズン2のエピソード「ロデオで大暴れ」では、トムの回想シーンとして本作の一場面が使用され、アンクル・ペコスも登場しています。さらに、『トムとジェリーテイルズ』にもアンクル・ペコスは再登場するなど、人気キャラクターとしてシリーズに貢献しています。

キャラクター

トム: ペコスにひげを奪われ、怒り狂いながらも、ペコスの執拗な追跡から逃れようとします。最終的に降伏しますが、テレビでのペコスの失敗を嘲笑います。しかし、その直後、テレビ画面から伸び出したペコスの手に最後のひげを奪われてしまうという結末を迎えます。
ジェリー: ペコスを家に迎え、ギターの弦をトムのひげで代用しようとするペコスを必死に止めようとしますが、阻止することはできません。
* アンクル・ペコス: ジェリーの叔父で、フォークギターの演奏をするミュージシャンです。少々強引な性格で、トムのひげを次々と奪い取る行動が目立ちます。原語版では吃音がある描写ですが、日本語吹替版では標準的な話し方になっています。

まとめ

『ひげも使いよう』は、トムとジェリーの定番のドタバタ劇に、ペコスの個性的なキャラクターが加わった、非常にユーモラスな作品です。トムのひげを巡る、予測不能な展開と、ペコスの強引ながらもどこか憎めない行動は、観る者に笑いと驚きを与えてくれます。フレッド・クインビー製作の集大成として、そして標準サイズでの最後の作品として、この作品は『トムとジェリー』シリーズの中でも重要な位置を占めています。日本のテレビでも長年に渡り放送され、DVDにも収録されているため、多くの視聴者に愛されている作品です。

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