フレッド・クインビー

フレッド・クインビー：MGM黄金期のアニメーションを支えたプロデューサー

フレッド・クインビー（1886年-1965年）は、アメリカ合衆国の映画プロデューサーとして、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）のアニメーション部門で輝かしい功績を残しました。ミネソタ州ミネアポリス生まれの彼は、ジャーナリストを経て劇場経営、そしてパテ映画に入社するなど、映画業界で様々な経験を積みます。1927年、MGMに移籍したクインビーは、短編映画部門の責任者を経て、1937年に設立されたMGMカートゥーンスタジオの制作責任者、プロデューサーに就任します。

MGMカートゥーンスタジオでの活躍と『トムとジェリー』

クインビーは、テックス・アヴェリー、ボブ・クランペット、ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラといった、後のアメリカアニメーション界を代表する才能豊かなアニメーターたちを積極的に登用しました。彼らが制作した作品群は、高い評価を受け、世界中で愛される名作となりました。中でも、クインビーがプロデューサーとして携わった『トムとジェリー』は、アカデミー賞を7回も受賞するなど、彼の代表作として知られています。他にも、『ドルーピー』や『クマのバーニー』といった人気シリーズも彼のプロデュースによるものです。彼の担当作品には必ず「Produced by FRED QUIMBY」のクレジットがあり、彼のMGMカートゥーンスタジオにおける存在感を示しています。1955年、クインビーは『動物たちの国づくり』(Good Will to Men)の制作後、MGMを退職。引退後は、カリフォルニア州サンタモニカで1965年に心臓発作のため79歳で亡くなりました。

アニメーターとの関係性：称賛と批判

クインビーは、優れたプロデューサーとして才能を発揮した一方で、アニメーターたちとの関係は複雑でした。彼は制作現場にはほとんど関わらず、完成した作品に自分の名前を大きくクレジットし、アニメーターたちの功績を軽視したとされています。ジョセフ・バーベラは、クインビーが自分の名前だけを大きくクレジットし、真の立役者であるアニメーターたちの名前を小さく扱うことに不満を持っていたと語っています。『トムとジェリー』がアカデミー賞を受賞する際も、クインビーは単独で賞を受け取り、ハンナとバーベラは受賞の機会を得ることができませんでした。また、アニメーターの昇給にも消極的で、バーベラは昇給を実現させるために長期間に渡り説得を続ける必要があったと証言しています。

特に、テックス・アヴェリーとは対立が激しかったと伝えられています。アヴェリーの個性的な作風は、クインビーの保守的な考えと衝突することが多く、激しい議論を繰り返していたようです。バーベラは、クインビーを激怒させることができた唯一の人物がアヴェリーだったと回想しています。しかし、バーベラはクインビーについて、最終的には「もっとも信頼できる人間だった」とも評しています。これは、クインビーがアニメーターたちに創作の自由を与え、やりたいことを実現できる環境を提供していたことを示唆しています。

クインビーの功績と複雑な人物像

フレッド・クインビーは、MGMカートゥーンスタジオの黄金期を支えた、成功したプロデューサーでした。彼のプロデュースによって多くの名作アニメーションが生まれ、現代にも大きな影響を与えています。しかし、その一方で、アニメーターたちとの関係においては、自己中心的で、功名心に囚われた人物像も垣間見えます。クインビーという人物像は、成功と矛盾、創造性と人間関係の複雑さを象徴する存在と言えるでしょう。彼の功績と人物像を多角的に理解することで、MGMカートゥーンスタジオの歴史と、アメリカアニメーションの隆盛の一端を垣間見ることができます。彼の功績は、多くのアニメーション作品を通して現代まで生き続けています。彼の業績は、アメリカアニメーション史に大きな足跡を残し続けています。

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