ひだ型巡視船

ひだ型巡視船：日本の海上警備を支える2000トン型巡視船

2001年の九州南西海域工作船事件は、日本の海上保安体制に大きな衝撃を与えました。この事件で、工作船がRPG-7対戦車擲弾発射器や82mm無反動砲などの強力な兵器を搭載していることが判明。これを受け、海上保安庁は従来の巡視船では対応困難であると判断し、新たな大型巡視船の建造を決定しました。その結果として建造されたのが、ひだ型巡視船です。

強化された防御力と攻撃力

ひだ型巡視船は、単なる大型化だけでなく、事件を教訓に、北朝鮮工作船の攻撃を凌駕する能力を備えています。まず、船体設計は、1000トン型巡視船（あそ型）とは異なり、上部構造物をアルミニウム合金、主船体を高張力鋼とすることで、高い強度と耐久性を両立。船型は高速船型を採用し、優れた凌波性と復原性を確保しています。

武装面では、ボフォースMk.3 40mm単装機銃に赤外線捜索監視装置を連動させた射撃管制機能（FCS）を搭載。これにより、荒天時でも工作船の射程外から正確な射撃が可能となりました。さらに、JM61-RFS 20mm多砲身機関砲も追加装備することで、より強力な攻撃力を実現しています。乗員の安全確保のため、防弾化も施されています。

航空運用能力と情報伝達

ひだ型巡視船は、ヘリコプター甲板を備え、AS.332スーパーピューマだけでなく、EC225スーパーピューマといった大型ヘリコプターの運用も可能です。これは、広範囲の監視や迅速な現場対応を可能にするためです。また、ヘリコプターが撮影した映像を受信するヘリコプター撮影画像伝送システム（ヘリテレ装置）や、これを地上基地に転送する衛星映像伝送システム船上型（船テレ装置）も搭載。迅速かつ正確な情報収集と共有体制が構築されています。

機動性と推進力

推進システムには、4基の高速ディーゼル機関とウォータージェット推進器4基を採用。高い機動性を発揮し、迅速な現場対応を実現しています。ウォータージェット推進器には逆噴射用のバケットが装着されており、優れた操縦性を誇ります。ただし、舷側排気による排気ガスによる船体後半部の汚れは課題として残っています。

指揮船としての役割

ひだ型巡視船は、単独の巡視船としてだけでなく、機動船隊の指揮船としての役割も担います。これは、複数隻の巡視船を連携させ、より効果的な警備活動を行うためです。そのため、停船等表示装置なども備えています。

建造費用と運用

1隻あたりの建造費用は約79億円と高額ですが、その高い運用能力と、日本の海上保安体制における重要性から、費用対効果は高いと言えるでしょう。ひだ型巡視船は、日本の排他的経済水域を守るために、重要な役割を担っています。

登場作品

ひだ型巡視船は、小説『虎07潜（タイガーゼロセブン）を救出せよ』にも登場しており、その高い能力と活躍が描かれています。

まとめ

ひだ型巡視船は、2001年の九州南西海域工作船事件を契機に、日本の海上保安体制強化のため建造された、高度な技術と能力を備えた巡視船です。その高い攻撃力、情報伝達能力、そして機動力は、日本の海上警備の安全保障に大きく貢献しています。今後とも、日本の海洋を守るために重要な役割を果たしていくでしょう。

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