ひとつの歌

『ひとつの歌』は、2011年に公開された杉田協士監督による日本映画です。本作は、写真という媒体を通じて、登場人物たちの繊細な感情が交錯する様子を丁寧に描き出しています。主演には、金子岳憲と石坂友里が名を連ね、物語に深みを与えています。第24回東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門に出品されたことでも注目を集めました。

物語の中心となるのは、ポラロイド写真を撮ることが趣味の剛（演：金子岳憲）です。彼は、ある列車事故で命を落とした女性、妙子（演：天光眞弓）の写真を偶然にも持っていました。それは、妙子が事故に遭う直前、駅のホームで撮影されたものでした。しかし、剛はその事実を、妙子の娘である桐子（演：石坂友里）に打ち明けることができずにいます。この打ち明けられない秘密が、物語の鍵となります。

桐子は、母の死を乗り越えようとしながら、心のどこかに寂しさを抱えています。彼女は、母が残した過去の品々を整理する中で、母の生きた証を少しずつ感じ取ろうとします。一方、剛は、妙子の写真をどう扱うべきか、そして桐子にどう接するべきか葛藤します。二人の間には、言葉にできない感情や、過去の出来事に対するそれぞれの想いが複雑に絡み合っています。

映画は、これらの登場人物たちの日常を静かに切り取り、それぞれの内面に深く迫ります。特に、ポラロイド写真という具体的なアイテムが、物語全体を象徴的に彩ります。写真に写された過去の瞬間は、時を超えて登場人物たちの現在に影響を与え、彼らの感情を揺さぶります。

映画には、枡野浩一、塩見三省といった実力派俳優も出演しており、物語に深みと奥行きを与えています。監督の杉田協士は、映像表現と音楽を巧みに融合させ、独特の雰囲気を作り上げています。

『ひとつの歌』は、言葉では表現しきれない人間の繊細な感情を、映像を通して丁寧に表現した作品です。登場人物たちの心の葛藤や、過去の出来事が現在に与える影響を、静かに、そして深く描いています。観る人それぞれの心に何かを問いかけるような、印象的な作品と言えるでしょう。

キャスト

金子岳憲
石坂友里
枡野浩一
天光眞弓
塩見三省

外部リンク

公式ウェブサイト
ひとつの歌 - allcinema
Hitotsu no uta - IMDb（英語）

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