びざん型巡視船 (2代)

びざん型巡視船：日本の海洋安全を守る180トン型巡視船の進化

びざん型巡視船は、海上保安庁が運用する巡視船の船級です。PS型に分類され、公称船型は180トン型です。ネームシップの配置換えに伴い、びざん型、ばんな型、らいざん型と名称が変遷してきた歴史を持ちます。本型は、高速力と外洋行動能力を両立させた新型巡視船として、既存の180トン型PS（みはし型）をベースに改良が加えられています。

設計：航続能力と居住性の向上

昭和62年度から平成元年度にかけて建造されたみはし型4隻は、計画では全長46メートルでしたが、実際には43メートルに短縮されました。びざん型は、このみはし型を元に全長を46メートルに延長し、清水や食料の搭載量を増やすことで、連続行動時間と居住性の向上を実現しました。

主機関は当初、みはし型と同様、SEMTピルスティク製（新潟鐵工所ライセンス生産）の4サイクル高速ディーゼルエンジン3基を搭載。V型16気筒（16PA4V-200VGA、単機出力3,500馬力）を両舷に配置し、各1軸のスクリュープロペラを駆動。V型12気筒（12PA4V-200VGA、単機出力2,400馬力）の中央機は低速用ウォータージェット推進機を駆動する設計でした。

しかし、新日韓漁業協定を踏まえ、平成10年度建造の7番船「みずき」では、防弾性や装備強化による重量増に対応するため、中央機の出力が両舷機と同等に増強されました。さらに、平成14年度の8番船「こうや」以降は、主機を軽油とA重油両対応の新潟16V20FX（単機出力5,000馬力）2基に換装、推進器をウォータージェット2基に変更し、舵を廃止するなど、大幅な改良が行われました。船幅も30センチメートル拡大されています。

装備：攻撃力と監視能力の強化

初期のびざん型は、1番船が無武装だったのに対し、2番船から6番船は13mm単装機銃（ブローニングM2重機関銃）を搭載していました。しかし、後に全船が赤外線捜索監視装置と連接したJM61-RFS 20mm多銃身機銃（目標追尾型遠隔操縦機能付き）に換装されました。平成14年度計画以降の建造船は、最初からJM61-RFSを搭載しています。

また、「みずき」以降は、暗視装置や高圧放水銃も装備されており、これは後続の建造船にも引き継がれました。これらの装備強化は、日本の領海警備における役割の重要性を反映しています。

同型船と活躍：数々の事件・事故への対応

通常、巡視船艇の船名は転属で変更されますが、「みずき」は九州南西海域工作船事件への貢献から、例外的に転属後も同名で運用されました。「みずき」は尖閣諸島中国漁船衝突事件や、台湾海巡署巡視船との衝突にも対応しています。

「のばる」は2016年に防波堤に衝突し、大破しましたが、修理後に再配備されました。こうした事故は、過酷な任務におけるリスクを物語っています。

さらに、日本政府はフィリピン沿岸警備隊に、びざん型をモデルとした40m級多目的対応船（Parola級巡視船）10隻を供与するなど、国際貢献にも貢献しています。

登場作品：フィクションにおける活躍

びざん型巡視船は、『海猿シリーズ』の映画作品にも登場しています。『LIMIT OF LOVE 海猿』では「あらせ」、「BRAVE HEARTS 海猿」では「びざん」が登場し、海難事故への対応を描いています。これらの作品は、海上保安官の任務とびざん型巡視船の能力を一般に広く知らしめる役割を果たしました。

まとめ：進化し続ける海洋警備の要

びざん型巡視船は、その建造経緯、装備の変遷、そして数々の事件・事故への対応を通して、日本の海洋安全保障に重要な役割を果たしてきたことがわかります。みはし型からの改良、装備の高度化、国際協力への貢献など、その進化は、常に変化する海洋情勢への対応力を示しています。今後も日本の海洋を守る上で、重要な存在であり続けるでしょう。

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