びほろ型巡視船

びほろ型巡視船：日本の沿岸警備を担った中型巡視船

びほろ型巡視船は、海上保安庁が運用していた中型巡視船（PM型）です。公称船型は改4-350トン型で、350トン型巡視船シリーズの最終発展型として、居住性の向上に重点を置いて設計されました。本型は、1974年から1978年にかけて20隻が建造され、日本の沿岸警備に貢献しました。

開発の経緯

350トン型巡視船は、それ以前の270トン型巡視船の揺れの問題を解決するために開発されました。とかち型、やはぎ型、まつうら型、くなしり型と改良を重ね、居住性と航行性能を向上させてきました。びほろ型は、くなしり型をベースに、居住性をさらに改善した設計となっています。特に、従来分散されていた居住区を機関区画前方に集約し、士官室を上部構造内に配置することで、居住環境の向上と荒天時の船内移動の容易さを実現しました。また、船体縦揺れによる居住性低下を考慮し、科員居住区の位置も最適化されています。

設計の特徴

びほろ型巡視船の設計上の特徴として、居住区の配置変更に加え、主機関を船体後方に配置するセミアフト方式の採用が挙げられます。これにより、煙突も後部に配置され、居住区への騒音影響を軽減しています。主機関は、単機出力1,500馬力の新潟6M31EXまたは富士6SD32Hを搭載し、推進器には可変ピッチ・プロペラを採用。安定した航行性能を実現しています。

兵装は、20mm単装機銃（一部の船では後に12.7mm単装機銃に換装）を搭載。レーダーはJMA 159Bを2基、またはJMA 1576とJMA 1596を1基ずつ搭載していました。

運用と退役

びほろ型巡視船は、1970年代後半まで活躍し、2004年以降、順次退役していきました。2012年5月7日、「かつら」の解役をもって、全船の運用が終了しました。350トン型巡視船としては最後のシリーズとなり、その後の350トン型巡視船は、特殊用途船や高速警備任務強化型へと進化していきました。後継としててしお型（現なつい型）が建造されましたが、排水量の増加により500トン型に分類されています。

登場作品

びほろ型巡視船は、いくつかの作品に登場しています。

映画『海猿 ウミザル』: 「みささ」が登場し、主人公たちが係留作業を行うシーンが描かれています。
小説『超空の連合艦隊』: 小説版第1巻に「みささ」が登場。タイムスリップしてきた「大和」など連合艦隊との遭遇という、フィクションならではの場面が描かれています。

まとめ

びほろ型巡視船は、居住性の向上を追求した設計と、長年にわたる日本の沿岸警備への貢献で知られる重要な船型です。その歴史と技術的特徴は、日本の海上保安体制の発展を象徴するものです。様々な改良を経て完成されたこの巡視船は、日本の海洋安全保障に貢献しただけでなく、フィクションの世界でもその存在感を示しています。今後、日本の沿岸警備の歴史を研究する上で、貴重な資料となるでしょう。

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