ふくふくしゃくなげ号

ふくふくしゃくなげ号

ふくふくしゃくなげ号（ふくふくしゃくなげごう）は、かつて広島県東広島市の福富地区で運行されていたコミュニティバスです。東広島市が事業主体となり、実際の運行業務は地域のタクシー会社である東広島タクシーおよび高屋タクシーの二社に委託されていました。

運行の歴史と廃止

このコミュニティバスの運行は、地域住民の交通手段を確保する目的で始まりました。平成20年（2008年）2月1日にまず試験運行が開始され、その成果を踏まえ、同年4月1日から本格的な運行へと移行しました。地域の重要な足となることが期待されていましたが、残念ながら利用者は年々減少の一途をたどりました。

運行開始から約2年が経過した平成22年（2010年）には年間1,834人の利用がありましたが、翌年以降はその数が大きく落ち込みます。平成23年（2011年）は1,109人、平成24年（2012年）は928人、そして平成25年（2013年）には848人と、右肩下がりの傾向が顕著になりました。最終的に、廃止が決定された平成26年（2014年）の年間利用者数は433人まで落ち込み、利用者数の減少を理由に同年に運行を終了しました。

廃止に対する反応

「ふくふくしゃくなげ号」の廃止に対しては、地域住民から反対の声も上がりました。平成26年（2014年）10月10日には、福富地区の住民自治協議会が東広島市に対して申し入れを行いました。住民側は、当時の副市長に対し、廃止後の代替となる交通手段についてどのように考えているのかを質問するとともに、利用者が少ないという理由だけでバスを廃止するという市の考え方そのものに疑問を呈し、地域住民としての意見や要望を伝えました。

運行内容の詳細

運行されていた当時の「ふくふくしゃくなげ号」は、特定の曜日にのみ運行されていました。具体的には、火曜日と金曜日が運行日として設定されていました。

運賃体系は以下の通りでした。

中学生以上の大人は1乗車につき300円。
小学生は1乗車につき150円。
幼児（1歳から小学校就学前まで）は、同伴者1人につき1人まで無料、2人目以降は150円。
乳児（1歳未満）は無料でした。

また、身体障害者手帳を提示した場合は、運賃が150円に割引される制度がありました。さらに、65歳以上の高齢者向けには、10枚綴りで2,000円という割引回数券も販売されており、利用しやすいように配慮されていました。

運行ルートとしては、福富地区内に以下の3つの路線が設定されていました。

上竹仁線
久芳線
* 上戸野線

これらの路線の一部区間には、利用者が希望する場所で自由に乗り降りができるフリー乗降区間が設けられていました。特に上竹仁線の各バス停留所には、時刻表に加え、地元の児童が描いた「ふくふくしゃくなげ号」に関するポスターが掲示され、地域に根ざした取り組みが行われていました。

運行に使用される車両は、路線によって異なっていました。上竹仁線には比較的収容人数の多いマイクロバス（三菱ふそう・ローザ）が用いられ、久芳線および上戸野線には、より小型で細やかな運行が可能なジャンボタクシー用のワンボックスカー（トヨタ・ハイエース）が使用されていました。

「ふくふくしゃくなげ号」は短命に終わりましたが、東広島市では、市町村合併以前の旧町域ごとに、地域の実情に合わせた様々なコミュニティバスや交通手段が運行されており、地域の公共交通ネットワークの一部を担う試みの一つでした。

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