ふたりのパラダイス

『ふたりのパラダイス』は、2012年にアメリカ合衆国で製作されたロマンティック・コメディ映画である。原題は『Wanderlust』。日本では劇場公開されず、ビデオスルーとしてリリースされた。主演を務めたジェニファー・アニストンとジャスティン・セローは、本作での共演がきっかけで現実の交際へと発展し、後に婚約を発表したことでも知られる。

物語

都会で暮らすジョージとリンダのガーゲンブラット夫妻は、ニューヨークに小さなアパートを購入し、新しい生活を始めようとしていた。ジョージは勤務先での昇進を期待し、リンダは自作のドキュメンタリーをテレビ局HBOに売り込もうと活動していた。しかし、アパート購入から間もなく、ジョージの会社が突然倒産し、リンダのドキュメンタリー企画も却下されてしまう。職を失い、住む場所も手放さざるを得なくなった二人は、ジョージの弟リックがアトランタで仕事を紹介するという話を受け、車で南下することを決める。

アトランタへの長距離移動の途中、休憩を取るため高速道路を降りた二人は、「エリジウム（Elysium）」と名付けられたB&B（ベッド・アンド・ブレックファスト）に立ち寄る。宿に近づくにつれ、裸の男性が歩いているのを目撃して驚く。その男性が近寄ってきたことに戸惑い、ジョージは慌てて高速道路に戻ろうとするが、不慮の事故で車を横転させてしまう。裸の男性、ウェイン・デイヴィッドソンは二人の救出を手伝い、車が走行不能となった二人はやむなくエリジウムに宿泊することになる。

エリジウムに到着した二人は、個性的な宿泊客たちと出会う。その夜、階下から響く騒音に気づき様子を見に行くと、そこがヒッピーたちの共同生活体（コミューン）であるエリジウムであることを知る。オーナーのカーヴィンをはじめ、セスのようないくつかの中心人物、エヴァといった様々な住人たちと交流する中で、ジョージとリンダは都会の喧騒から離れたシンプルな生活に少しずつ惹かれていく。

翌朝、セスの誘いもあり、二人はアトランタへ向かう前にエリジウムの住人たちと交流を深める。車を元に戻す手伝いを受け、一度はアトランタのリックの家へ向かうが、そこでの生活になじめず、結局エリジウムに戻り、二週間の試験的な滞在を始める。

滞在が進むにつれて、ある集会で供された飲み物を口にしたリンダは精神的な解放感を覚える一方で、ジョージはコミューンの独特な価値観、特に「自由恋愛」の考え方に戸惑いを隠せない。セスはリンダに、エヴァはジョージにそれぞれ関心を示し、自由恋愛を受け入れられない二人は、これにより生じる奇妙な状況に直面する。

一方、エリジウムの土地は所有権を巡る問題を抱えており、オーナーのカーヴィンが権利書を紛失したことから、カジノ建設を企む不動産業者に狙われていた。開発業者が重機を伴って現れた際、リンダはメディアの注目を集める大胆な行動に出て、他のメンバーもそれに続いた結果、開発計画は大きな話題と共に中止される。リンダはコミューンの人々から英雄として賞賛される。

試験滞在期間が終了し、ジョージは自由恋愛を受け入れる生活に疑問を感じ、リンダに共にエリジウムを出るよう促す。しかし、コミューンに残ることを望んだリンダはセスと関係を持つ。ジョージもエヴァに誘われるが、その場の雰囲気に馴染めず、不器用な対応で彼女を遠ざけてしまう。翌朝、コミューンの生活になじめないジョージは、ここに留まるのは困難だとリンダに告げ、リンダが残ることを選んだため、ジョージは単身アトランタの弟宅へ戻る。

リンダに惹かれていたセスは、彼女との新たな生活を望み、エリジウムの土地の権利書を捜索する。権利書を見つけたセスはコミューンを裏切り、開発業者に11,000ドルで売却しようと画策する。しかし、セスが開発業者と共に権利書を燃やす場面を、コミューンの子供が目撃する。セスはリンダに共にエリジウムを出ようと誘うが、リンダはそれを拒否する。

その頃、リンダへの思いを改めて自覚したジョージは、彼女を追ってコミューンに戻る。非暴力を唱える他のメンバーたちが見守る中、ジョージはセスと対決する。子供の証言によってセスの裏切りが明らかになり、激怒したジョージはセスに殴りかかる。

後日、エリジウムを取材したニュース番組がその後の状況を報じる。ジョージとリンダは出版社を設立し、コミューンの住人だったウェインの政治スリラー小説を最初に出版。この作品は後にレイ・リオッタ主演で映画化される。一方、カーヴィンはエリジウムの創設者たちと再会し、権利書のコピーが発見されたことで、土地の所有権を取り戻すのだった。

キャスト

ジョージ - ポール・ラッド（日本語吹替: 東地宏樹）
リンダ - ジェニファー・アニストン（日本語吹替: 安達忍）
セス - ジャスティン・セロー（日本語吹替: 檀臣幸）
カーヴィン - アラン・アルダ（日本語吹替: 小島敏彦）
エヴァ - マリン・アッカーマン（日本語吹替: まつだ志緒理）
ウェイン - ジョー・ロー・トルグリオ（日本語吹替: 多田野曜平）

この作品は、現代社会の価値観と、それとは全く異なるコミューンの自由奔放なライフスタイルとの対比を通して、幸福や生き方について問いかけるコメディドラマである。主人公夫婦が直面するアイデンティティの危機や関係性の変化が、ユーモアとシリアスさを交えて描かれている。

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