ほぞ継ぎ

ほぞ継ぎ（ほぞつぎ）

ほぞ継ぎは、主に木材などの部材同士を組み合わせる際に用いられる伝統的な接合技法です。特に、部材を直角に接合する場合に広く活用されてきました。その歴史は古く、世界各地で数千年にわたり、木工技術の基本的な技法として受け継がれています。シンプルながら非常に強固な接合部を作り出せるのが特徴です。

基本的な仕組み

ほぞ継ぎの基本的な構造は、「ほぞ穴（mortise）」と「ほぞ（tenon）」という二つの要素から成り立っています。ほぞ穴は一方の部材に掘られた穴、ほぞはもう一方の部材の端に作られた突起です。ほぞをほぞ穴に差し込むことで部材同士が結合されます。

通常、ほぞはほぞ穴にぴったりと収まるように精密に加工されます。多くの場合、ほぞの根元には「肩（shoulder）」と呼ばれる段差が設けられます。この肩が相手部材の表面に接することで、ほぞ継ぎ全体の強度を高め、部材のずれを防ぎ、またほぞ穴の開口部の不完全さを隠す役割も果たします。接合後は、接着剤を使用したり、木製の栓や金属製の留め具、あるいはくさびを打ち込むなどして、さらに固定を強化することもあります。

この技法は木材だけでなく、石材や金属加工においても古くから応用されてきました。石造建築や鍛冶の分野でも、同様の考え方に基づく接合が見られます。

ほぞ穴とほぞの種類

ほぞ継ぎには、用途や強度、仕上がりの見た目などに応じて様々なバリエーションがあります。ほぞ穴とほぞそれぞれにいくつかの代表的な種類が存在します。

ほぞ穴の種類

三枚組継ぎ (Open mortise / Bridle joint)
ほぞ穴の一辺が開放されている形状です。
止めほぞ継ぎ (Stub mortise)
部材の厚さを貫通しない浅いほぞ穴です。
通しほぞ継ぎ (Through mortise)
部材の厚さを完全に貫通するほぞ穴です。
くさびハーフダヴテイル (Wedged half-dovetail)
ほぞ穴の奥側が入口より広くなっており、くさびを打ち込むことで抜け止めとするタイプです。

ほぞの種類

止めほぞ (Stub tenon)
相手部材の厚さよりも短く、ほぞ穴に差し込んだ時に外から見えないほぞです。
通しほぞ (Through tenon)
相手部材を貫通し、裏側からはっきり見えるほぞです。
雇いほぞ (Feather tenon / Loose tenon)
接合する両方の部材にほぞ穴を掘り、別途加工したほぞを差し込んでつなぐタイプです。
栓打ちほぞ (Pegged tenon / Pinned tenon)
ほぞとほぞ穴に穴を開け、木栓やダボを打ち込んで固定するほぞです。
* くさび止めほぞ (Tusk tenon)
くさびを用いて接合部を固定する構造を持つほぞです。

寸法と強度への配慮

ほぞ継ぎの寸法は、一般的に接合する部材の厚さに応じて決定されます。伝統的な木工では、ほぞの厚さは部材の厚さの約3分の1とするのが慣例とされています。また、窓枠の角部分など、横方向の力に対する強度が必要な箇所では、「腰（haunch）」と呼ばれる部分を設けることがあります。これは、ほぞの根元部分を一部残すことで、ほぞがねじれるのを防ぎ、強度をさらに向上させるための工夫です。

歴史と応用

ほぞ継ぎの技術は極めて古く、確認されている最古の例は7000年以上前に遡ります。この技法は、世界各地で同時多発的に発明されたと考えられています。ドイツのライプツィヒで見つかった世界最古の木造構造物とされる井戸や、紀元前2500年頃のエジプトで作られたクフ王の船の板材の接合部など、古代の重要な木造遺構から多数発見されています。

新石器時代初期の線帯文土器文化における井戸の構築にも使われていた形跡があり、中東やヨーロッパ、アジアの古代遺跡から出土する家具にもこの技術が多く見られます。特に中国の伝統的な木造建築では、梁や柱、屋根組みなどが、くぎや接着剤をほとんど使用せずに、ほぞ継ぎを中心とした継手のみで構築されています。これにより、木材の湿気による伸縮に対応し、構造の耐久性を高めています。

石材においてもこの技術は応用されており、イギリスのストーンヘンジを構成する巨石の一部には、ほぞ穴とほぞ状の加工が施されており、紀元前2600年から2400年頃に立てられたと考えられています。日本国内でも、富山県の桜町遺跡や石川県の真脇遺跡から約3000年前のほぞ加工された木材が見つかっており、日本でも独自に発展した可能性が指摘されています。

ほぞ継ぎは、そのシンプルで理にかなった構造により、現代に至るまで木工技術の基礎として広く使われ続けている、極めて重要な伝統技術と言えるでしょう。

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