ほてい屋

ほてい屋の歴史と衰退

ほてい屋（ほていや）は、かつて東京都四谷区に存在した著名な呉服店であり、百貨店でもありました。その歴史は1870年にさかのぼり、神奈川県都築郡津田村出身の西條巳之助によって始まります。彼は、牛込の戎商店での修行を経て、故郷にて呉服商を開業しました。しかし、ビジネスを続けるには商圏が限られていたため、1881年には東京に進出し、「伊勢屋呉服店」として名を改めます。残念ながら、1882年には火災に見舞われ、店は全焼し、全財産を失うこととなります。

その後、西條巳之助は1884年に四谷伝馬町で呉服店を再開し、徐々に営業規模を拡大していきます。この頃、彼は丸の内に描かれた福々しい布袋様を商標として使用しており、次第に人々から「ほていや」の愛称で呼ばれるようになります。そして、1894年には店舗が移転し、またその後も順調に業績を伸ばしました。

西條巳之助の三女は富山県の青木竹次郎と結婚し、1910年には娘婿である西條清兵衛が家督を相続します。清兵衛は新宿の将来性に目をつけ、1925年に新たに百貨店の建設を決断します。取り組みの結果、1926年10月1日に新宿三丁目で「ほてい屋」が開店し、資本金100万円で法人化されました。引き続き、店舗は当時の東京では屈指の規模を誇るようになり、全盛期には新宿での三越に次ぐ成果を上げていました。

しかし、繁栄は長く続かず、次第に競合他社の進出に苦しむようになります。1930年には経営者の西條清兵衛が経営不振に悩んで自殺に追い込まれ、彼の後を継いだ未亡人の西條千代が日本初の女性社長として事業を引き継ぐことになります。

その後も分店の「魚菜市場」を開くなどの努力を重ねましたが、競争は厳しく、特に1933年に伊勢丹が新宿で開店したことは、ほてい屋にとって大きな打撃となりました。不渡手形を出す事態にもなり、資金が尽きる中、1934年には経営再建のための交渉が始まるも、同年末には再び不渡手形を出す事態に陥ります。

経営再建に向け、前川財閥からのサポートを受ける中で、最終的に伊勢丹に店舗の土地や建物を含む一切が買収されることが決まりました。1935年には株主総会で解散が決議され、その後、店舗は伊勢丹に統合され、再び新宿の地で新しい形を持つこととなりました。最終的に、伊勢丹はほてい屋の旧店舗を全面的に改装し、1936年には新しい大型店舗として生まれ変わります。

ほてい屋の歴史は、開業から繁栄、経営危機、そして最終的な消滅までの波乱の物語であり、都市の発展と共に刻まれた一幕が、今に伝わる教訓ともなっています。

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