ほ座ガンマ星

ほ座γ星について

ほ座γ星（Gamma Velorum）は、ほ座に位置する明るい恒星で、その複雑な多重星系として知られています。肉眼でも観測可能な2等星であり、天文学的に非常に興味深い対象です。この星系は、少なくとも6つの星で構成されており、その中でも特にγ2星（γ A）が注目されています。

γ2星（γ A）：特異な連星系

γ2星は、ウォルフ・ライエ星（γ星Aa）と青色超巨星（γ星Ab）の連星です。ウォルフ・ライエ星は、もともと太陽の40倍もの質量を持っていたと考えられていますが、強力な恒星風によって外層を吹き飛ばし、現在は太陽の10倍程度の質量になっています。この星は、水素やヘリウムの核が露出しており、非常に高温で、その表面温度は57,000Kから70,000Kにも達します。また、光度は太陽の約10万倍と非常に明るく輝いています。

γ星Aaは、ウォルフ・ライエ星の中でも、炭素が多いWC8型に分類されます。この星は、毎年、太陽質量の10万分の1程度の質量を失い続けており、その質量減少は非常に活発です。

一方、γ星Abは、質量が太陽の約30倍の青色超巨星です。この二つの星は、約78.5日の周期で互いに周回しており、その軌道は1.2天文単位以上離れています。

γ1星（γ B）：容易に分離可能な伴星

γ1星は、γ2星から41.2秒角離れた位置に存在する4等星の青色巨星です。双眼鏡でも容易に分離して観測することができます。γ1星は、γ2星系から少なくとも15,000天文単位離れていると考えられており、2018年に公開されたガイア計画のデータによると、太陽系からの距離は約920光年と推定されています。

その他の伴星

γ星系には、さらにいくつかの伴星が確認されています。γ2星から60.9秒角離れた位置には、スペクトル分類がA型で7.4等級のC星、93.9秒角離れた位置にはA型スペクトルの9.4等級のD星があります。また、D星から1.6秒角離れた位置には12.8等級のE星も存在します。

名称について

ほ座γ星は、アラビア語で「誓約のスハイル」を意味するスハイル・アル＝ムフリフ（Suhail al-Muhlif）と呼ばれていました。スハイルは、「輝いているもの」、「栄光あるもの」、「美しいもの」を意味するとも言われています。ただし、スハイルという名称は、ほ座のλ星にも用いられており、国際天文学連合によってその固有名として認証されています。

また、ほ座γ星は、レゴール（Regor）という通称でも知られています。これは、アポロ1号の搭乗員だった宇宙飛行士ガス・グリソムが、同じく搭乗員だったロジャー・チャフィーの名前（Roger）を逆にして名付けたものです。



ほ座γ星は、その複雑な構造と特異な性質から、天文学における重要な研究対象となっています。

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