ぼくらの町は川っぷち

「ぼくらの町は川っぷち」：高度経済成長期の風景を映す、少年少女合唱団の団歌

1960年代、日本の高度経済成長期。東京都大田区西六郷。多摩川沿いに広がる京浜工業地帯の中に位置するこの町を舞台に、西六郷少年少女合唱団の団歌として生まれた楽曲「ぼくらの町は川っぷち」は、その時代の空気感を色濃く反映した作品です。作詞は峯陽、作曲・編曲は林光という、当時を代表する音楽家たちの才能が結集しています。

この楽曲は、NHKの音楽番組『みんなのうた』で紹介されたことで広く知られるようになりました。1964年6月から7月にかけて、倍賞千恵子の歌声で初めて放送され、その後、1966年12月から1967年1月にかけては大阪放送児童合唱団によるバージョンが放送されました。これらの初期の放送は、長らく再放送や映像化されることはありませんでしたが、2011年に開始された『みんなのうたプロジェクト』により、貴重なリメイク版の音源が発見されました。そして、2012年2月12日、NHKラジオ第1放送の特番で、45年ぶりにリメイク版の第1番が放送され、再び人々の耳に届くこととなりました。

歌詞は、工場や川が織りなす西六郷の風景、そこで暮らす人々の生活、そして子供たちの視点から見た町の情景を描写しています。高度経済成長期の活気と、一方で環境問題や都市化の影も感じさせる、複雑な町の姿を歌い上げています。子供たちの素直な歌声と、重厚な音楽アレンジの調和は、この歌に独特の深みを与えています。

「ぼくらの町は川っぷち」は、単なる団歌としてだけでなく、高度経済成長期の日本社会の一断面を伝える貴重な文化遺産と言えるでしょう。昭和の時代の空気感を今に伝える、この楽曲は、日本の音楽史においても重要な位置を占めていると言えます。

なお、作詞・作曲を手掛けた峯陽と林光は、その後も『みんなのうた』で「ぼくらの空は四角くて」を発表しています。この楽曲もまた、町の様子を歌った作品であり、彼らの創作活動において、地域社会への関心の高さをうかがい知ることができます。

録音された音源は、2004年発売のCD『ときめきどうようミュージアム(2)のびのびうたごっこ』（ビクター VICS-60169〜70）、2009年発売のCD『ぼくらの町は川っぷち』（フォンテック EFCD-4144）などで聴くことができます。指揮は鎌田典三郎、歌は西六郷少年少女合唱団によって収録されています。これらの音源は、当時の歌声や音楽を直接体感できる貴重な資料として、現在も愛されています。

「ぼくらの町は川っぷち」は、失われつつある過去の記憶を呼び起こし、現代社会に問いかける、時代を超えたメッセージを持つ楽曲です。この歌がこれからも多くの人々の心に響き続けることを願ってやみません。

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