まあだだよ

映画『まあだだよ』

『まあだだよ』は、著名な映画監督・黒澤明が手がけた1993年の日本の映画で、内田百閒の随筆を基に制作されました。この作品は、黒澤監督のキャリアの中で特別な位置を占める記念すべき一作であり、彼の監督生活50周年と通算30作品目にあたる作品です。しかし、公開当時は『ロボコップ3』や『許されざる者』などの強力な競合作に押され、興行的には思ったほどの成功を収めることができませんでした。

概要

物語は、日本の戦前から戦後にかけての時代背景を舞台に、百閒先生というキャラクターを通して展開されます。この作品は、彼が法政大学で教鞭をとる様子から始まり、学生たちとの温かい交流やその後の生活に焦点を当てています。戦闘やアクションシーンを排除した穏やかなトーンの中で、教授と生徒の関係は深まっていきます。特に、キャッチコピーの「今、忘れられているとても大切なものがここにある。」は、この作品のテーマを象徴しています。

あらすじ

物語は、百閒先生がドイツ語教師を辞めるシーンから始まります。彼の別れを惜しむ学生たちは、曲『仰げば尊し』を歌いながら送ります。その後も、百閒先生の家には彼を慕う門下生たちが集い、鍋を囲んで楽しい時間を過ごす日々が続くはずでした。しかし、時代は戦争へと向かい、百閒先生も空襲により家を失ってしまいます。貧しい小屋に身を寄せる先生と妻は、戦後の復興を助けられ、新たな住居を得ることができました。

昭和21年、学生たちは「摩阿陀会」と呼ばれる催しを企画し、先生の健康を祝います。この会では「まあだかい?」という問いかけに対して、先生が「まあだだよ!」と返す場面が印象的です。月日が経ち、記念すべき17回目の摩阿陀会では、门下生たちに孫たちも加わり、賑やかな雰囲気の中、百閒先生の喜寿を祝います。しかし、突然の体調不良に見舞われた先生は、皆に送られ退場することになります。

その夜、先生は穏やかに眠りにつき、夢の中でかくれんぼをしている少年が「まあだだよ!」と叫ぶ姿が描かれます。夕焼けの空が深く染まる中、物語は静かに幕を閉じます。

キャスト

本作には、松村達雄が内田百閒を演じるなど、豪華なキャスト陣が揃っており、香川京子や井川比佐志、所ジョージなどが出演します。これは、黒澤明映画において特に注目される点です。

スタッフ

監督・脚本・編集を手がけたのは黒澤明自身であり、その独特のスタイルと深い洞察力が作品の質を高めています。音楽は池辺晋一郎が担当し、映画に彩りを添えています。また、美術や撮影、照明などの各方面にわたるスタッフたちの技術も作品に大きな影響を与えています。

エピソード

作品制作の背景には、黒澤監督のユーモアが垣間見えます。出演者の香川京子は、その演技の才能から監督の期待を一身に引き受ける形となり、高く評価されました。

このように、『まあだだよ』は単なる映画ではなく、黒澤明の集大成であり、彼の思い出が詰まった作品として、観る者に深い感動を与えるものとなっています。今なお、多くの人々に愛され続けるこの映画は、黒澤明の名作のひとつと言えるでしょう。

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